謝罪する日産の幹部
山内CCO
山内CCO

 日産自動車は7月9日、完成検査時の排出ガス測定で、データの改ざんや、保安基準に定められた方法から逸脱した方法で測定していたことが発覚したと発表した。昨年9月に無資格者の完成検査問題が発覚し、その後に原因究明と再発防止策をまとめたが、その後も不正な行為が継続されていた。横浜市のグローバル本社で開いた記者会見には西川廣人社長CEO(最高経営責任者)は姿を見せず、ものづくり全般を統括する山内康裕CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)が「完成検査問題の再発防止を進めている中で、こうした事案が発覚し、お客様をはじめ、関係者い深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

 同社は無資格者の完成車問題の再発を防止するため、今年4月に新設した「日本生産事業本部」が中心となって生産部門での法令遵守点検を行ってきた。同じく無資格者が完成検査を行っていたスバルが、完成検査時の排ガス・燃費の測定で不正を行っていたことが発覚したのを受けて、日産でも同様の事例がないのかを調査している中で今回の不正が発覚した。

 不正は日産の九州工場を除く、日産の栃木工場、追浜工場、日産車体の湘南工場、九州工場、オートワークス京都工場の完成車5工場で行っていた。抜き取り検査データが残っていた2187台のログデータを精査したところ、半数以上に当たる19車種・1171台で不正が見付かった。日産の九州工場は排ガス測定のエキスパートが監督者として配置されていることから適正に行われていた模様だ。

 不正は保安基準で定められた温度や湿度などの試験環境を逸脱した方法で排出ガスや燃費を測定していたのが690台、二酸化炭素排出量や一酸化炭素、メタンなどの測定値を書き換えて検査報告書を作成していたのが913台。ただ、これらの不正が見付かった車両は記録に残っている分だけで、長年にわたって不正が続いてきた可能性もある。

 同社では残っている試験データを再検証した結果、「GT-R」を除いて保安基準に適合していることや、型式としての排出ガスの平均値が諸元値を担保できていることを確認したとしており、リコールなどは実施しない方針。GT-Rは生産台数が少ないため、生産車を全数測定して今後、同様の検証を行う予定。燃費についてもすべての抜き取り検査対象車種が燃費の諸元値を担保できていることを確認、カタログなどで公表している燃費の数値に誤りはないとしている。

 山内CCOは、無資格者の完成検査問題が発覚した後も不正が続いていたことについて「コンプライアンス意識の再徹底を1人1人植え付けるための対策を実行してきたつもりだったが、問題の根の深さと活動は道半ばである」と認識したと肩を落とした。

 不正を行っていた原因については、従業員のコンプライアンス意識の低さに加え「日産の社内の基準が厳しく、(規定値外の)データが出ると、検査のやり直しなどの厳しいアクションをとることが規定されている」(山内CCO)ことが背景にあると推定する。ただ、「完成検査問題と問題は同根」と述べ、生産現場とマネジメント層のコミュニケーションの乖離が原因との見方を示した。コンプライアンス教育のやり方の見直しも検討する。

 日産では、当面の対策として完成車の全生産拠点で排気抜き取り検査を一旦停止し、管理者、監督者が常時立ち会って検査を再開し、データを確認するのに加え、7月末までに測定値を書き換えできないシステムに変更する。

 一方、日産では今後、排ガス・燃費試験測定の不正についての原因や背景を含めて徹底した調査を行う方針で、原因究明を中心とした調査は西村あさひ法律事務所に依頼、その結果をもとに1カ月後をメドに再発防止策を見直す。