ブランド価値経営の浸透を目指す(2月にオープンした都内のブランド発信拠点)

 マツダが「ブランド価値経営」の浸透を狙う。過去には値引きと残価減の悪循環を〝マツダ地獄〟とも揶揄(やゆ)された。この過ちを繰り返さず、着実に成長してきた米国販売の施策を手本に、販売台数と収益の二兎を追う。日本の実情に合わせ、効率的に収益を稼ぐ体制づくりが問われている。

 足元のマツダの国内販売は伸び悩んでいる。2024年度は約15万2千台、シェアは3.3%だ。15年度から約8万台減り、シェアも1.4ポイント下がった。

 19日に発表した新方針では、コロナ禍前の19年度(20万2千台)以来となる年間20万台を目標に置いた。「2030経営方針」の最終段階に当たる28年度~30年度をターゲットに反転攻勢を狙う。

 マツダは10年代まで、販売台数の拡大を追い求めた値引き販売が横行。15年度には新モデルや技術群「スカイアクティブ」の訴求などで、シェアは一時伸びたものの、その後は再び低迷する。直近では新規顧客の獲得などが課題となり、マツダとして強化しているブランド戦略も販売店レベルにまで投資を伴い浸透しているわけではなかった。

 年間20万台を達成するには「重点店舗」300店での店舗当たり年間400台の販売の実現がカギとなる。現在は国内に約700ある店舗のうち、上位300店舗でも年間で平均250台にとどまる。

 国内では都市部への人口一極集中が進み、新車需要、保有台数とも先細りが必至だ。マツダも販売店数は中長期的に減らす方針で、地方都市に「最低でも数店舗」(三浦忠国内営業本部長)を残しつつ、全国10都市の「重点地域」への投資を集中させていく。

 成功事例とする米国では、店舗デザインを刷新した「新世代店舗」の展開や、ブランドの世界観が顧客体験で伝わるキャンペーンなどを展開し、1店舗あたり年間1千台規模の販売を実現。成長の大黒柱となった。

 三浦忠国内営業本部長は「重点店舗や車種ごとのしっかりとした計画を持っている」と販売施策への手応えを語る。今年度は主力の「CX―5」の新型を発売するほか、27年度にはタイで生産する新型小型SUVや、専用プラットフォームを用いた電気自動車(EV)、新たなエンジン「スカイアクティブ―Z」を動力とする独自のハイブリッド車(HV)などの投入を控える。商品だけでなく、背後にあるブランドの価値や世界観も販売現場で効果的に伝えることで、顧客との関係を強固にすることを目指す。