山本周五郎の三大長編作品の一つである「虚空遍歴」。旗本の次男坊に生まれた主人公の中藤冲也が武士の身分を捨て、人々の心を揺り動かす浄瑠璃の創作を目指した苛烈な人生を描く。読者に強烈な読後感を与えつつ、数多くある山本作品の根底に共通する思想を浮き彫りとしたものだ◆それは「人間の真価は、その人が死んだとき何を為したかではなく、彼が生きていたとき何を為そ…