日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長は5月13日、日刊自動車新聞などのインタビューに応じ、三菱自動車や経営統合が破談となったホンダとの協業について、特に北米事業での連携を模索していることを明らかにした。米国工場の生産能力の有効活用や、トランプ政権の追加関税による影響を軽減する狙いがある。三菱自は日産と共同で工場への投資を検討している。ホンダとも水面下で議論を続け、不透明な事業環境を乗り切るシナジー効果の創出を目指す。
日産は米国に、スマーナ工場(テネシー州)とキャントン工場(ミシシッピ州)の2つの完成車工場を有する。このうちスマーナ工場は当初の1直化する予定を変更し、日産自動車九州からSUV「ローグ」の生産を一部移管して2直生産を維持するなど、関税影響の軽減を図っている。
日産、ホンダともに重要市場である北米が関税問題で揺れる中、エスピノーサ社長は「複数のパートナーと協業の余地がある。米国工場をどう使えるかを検討している」と、生産能力の活用を模索していることを明らかにした。また、三菱自は13日、日産の工場に共同出資してSUVを共同生産する検討に入ったことを明らかにしていた。
日産のエスピノーサ社長は就任直前、チーフ・プランニング・オフィサーとしてホンダとの協業や経営統合の議論にもあたっていたと話し、「統合交渉が中止になったことでホンダと日産のエンゲージメント(関係性)が変わった訳ではない。協業の議論は加速化しており、議論の俎上に載る事業の数も増えている」と話した。
ただし、エスピノーサ社長は「安定性を社内に取り戻すことが喫緊の課題だ。厳しい状況だが覚悟を持ってベストを尽くす」と、足下では事業の立て直しに注力する姿勢を強調する。
日産の25年3月期通期の純損益は6708億円の赤字で、今期も関税影響が不透明なため通期の営業利益と純利益の公表を見送った。他社との提携についても「日産の将来にとって極めて大切な決定になる。明確に根拠を精査して、時間を取って決定を下す」と、期限は設けずに慎重に検討し、効果の最大化を図る姿勢を強調した。