米国では1直化による減産を見送る方針(ミシシッピ州のキャントン工場)

 日産自動車は、完成車の生産能力を追加で削減する検討に入った。現在、年産能力を500万台から2026年度までに400万台へ2割減らす計画を進めているが、削減分を上積みする。国内拠点の能力削減も視野に入れる。事業環境が不透明な中、新経営陣の下でリストラを徹底して固定費を一気に減らし、商品力を高めてV字回復を目指す。

 日産は米国、中国事業の低迷で業績が悪化したことから24年11月、経営再建計画「ターンアラウンド」を策定した。目玉は年間で約500万台の生産能力を2割削減することで、タイ工場の一部を25年4~6月期に閉鎖し、他にも2拠点を25年10~12月期と26年度中に閉鎖する予定だ。タイ以外の閉鎖候補は公表していないが、2拠点とも海外工場とみられる。これにより、350万台程度の販売に見合った体制とし、損益分岐台数を250万台へと引き下げることを狙っている。

 こうした中、トランプ米政権が3日に米国向け輸出車に25%の追加関税を発動したことを踏まえ、4月から予定していた米スマーナ工場(テネシー州)の1直化を見送る方針。その代わり、日本を含めてグローバルで生産能力と生産車種を抜本的に見直し、販売力に見合った適正化をさらに進めることにした。

 日産は、中国などでの新車販売の低迷や、主力市場である米国でのインセンティブ(販売奨励金)の増加で収益が悪化。25年3月期の最終損益が800億円の赤字となる見通し。経営再建に向け、4月1日付でイヴァン・エスピノーサ氏が社長兼CEO(最高経営責任者)に就くなど、経営体制を一新した。

 新経営陣は抜本的な構造改革を推進する方針で、生産能力を追加削減するなど、スリム化を徹底する。リストラ費用をねん出するため、ルノーの電気自動車(EV)とソフトウエアの専業会社「アンペア」への出資取り止めや、ルノーとのインド合弁会社の株式売却などに踏み切る。状況に応じて保有するルノー株式の5%分を売却する権利も確保した。

 (2025/4/9 修正)