主要な自動車部品にも25%の追加関税がかかる見通し(イメージ)

 トランプ米政権による追加の輸入関税は、3日発動した自動車(25%)に続き、5月3日までに主要な自動車部品にも広がる。同日までに、米商務長官が25%の追加関税を課す自動車部品の品目を指定する見通しだ。部品メーカーは日本のほか、中国や東南アジアにある生産拠点から米国へ自動車部品を輸出しており、追加関税の影響は甚大だ。中小・小規模(零細)企業は追加のコスト削減や生産移管もままならず、政府による支援策が急がれる。

 「サプライチェーンが一度でも壊れると(再構築するのは)難しい。短期的には資金的な部分で(支援を)お願いしたい」。4日、自民党のヒアリングに応じた日本自動車工業会(自工会)の片山正則会長はこう訴えた。

 トランプ米政権は3日、米国に輸入される全ての自動車に25%の追加関税を課した。日本から米国へ輸出された乗用車は約133万台(2024年)と国内生産の3割を占める。仮に自動車メーカーが関税分を車両価格に転嫁した場合、販売とともに国内生産が落ち込み、部品の発注量に連鎖しかねない。独マーレグループの東アジア最高責任者で、マーレジャパン(東京都豊島区)の木下靖博社長は「米国に輸出する部品は、価格への転嫁が必須となる。日本車の販売台数が短期的にどれほど減少するか、状況を注意深く見守りたい」と話す。仮に価格転嫁を見合わせても「関税が上がる分、原価低減を求められるリスクも想定される」(部品メーカー)と警戒が広がる。

 追い打ちをかけるように部品への追加関税も控える。自動車部品の米国輸出は日本からだけでも1兆2千億円(24年)を超える上、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)の生産拠点から直接、部品を米国へ送っているメーカーも多い。納入先の自動車メーカーが関税分をすべて負担してくれるとは限らず、影響が懸念される。すでに自動車メーカーから折半負担を提案された部品メーカーもある。

 特にティア(階層)の深部にいる3次以降の中小・零細部品メーカーの場合、原価低減にも限界があるし、人件費が高騰する米国へ生産を移すのも現実的ではない。このため、当面の対策として自工会は中小・零細を中心にサプライヤーの経営支援を政府に強く要望している。

 自民党とは別に、経済産業省は「米国関税対策本部」を3日に立ち上げた。専門の窓口を全国に約1千カ所設置して企業からの問い合わせに応じるほか、日本政策金融公庫などによるセーフティネット貸付を「売上高で前年同期比5%以上の減少」という要件を満たさなくても適用するよう要件を緩和する。中小事業者に経営を指南する「ミカタプロジェクト」でも、関税対策などを支援していくメニューを追加した。今後も対策は拡充される見通しだ。

 トヨタ自動車など、車両価格への転嫁を見合わせる自動車メーカーもあり、〝トランプ関税〟による米国販売や国内生産への影響が明らかになるのは今夏ごろになりそう。先行きが不透明な中、自動車業界では減産や業績悪化に対する緊張感が高まっている。