米政府は3日、日本車を含む輸入車に対して25%の追加関税を発動する。米国向けは日本からの輸出全体の約3割を占め、事業や販売への影響は不可避だ。最大手のトヨタ自動車は関税発動後も販売価格を変えない方向で検討する一方、多くのメーカーは対応を決めかねている。とはいえ妙案はなく、自動車業界の目線は、政府と足並みをそろえたサプライチェーン(供給網)への支援や国内需要の喚起へと向きつつある。
「車両価格は市場との対話で決めるもの。どこまで上げたら影響が出るのか」―。自動車メーカーの関係者は頭を抱える。米国では新車販売の約半数が輸入車だ。さらに基幹部品も追加関税の対象となることから「新車価格の上昇は避けられない」との見方が強まっている。ただ、値上げによる販売減は最小限に食い止めたいところ。今は競合他社の出方をうかがっている状況だ。過去と違い、今の米国向け輸出はトヨタ「レクサス」ブランドなどプレミアム車種が多い。それだけに価格と販売台数の関係が読みにくく、値上げに踏み切るにしても、各社が2026年モデルへと切り替える9月になるとの見方が強い。
追加関税は当初、米国への投資を引き出すディール(取引)との見方が強く、自動車メーカー関係者も「交渉カードは用意している」と語っていた。しかし、ヒョンデが米国投資を表明した韓国も関税を回避できなかった。
こうした中、トヨタは「固定費の低減などに取り組みながら、当面は現在のオペレーションを維持する」とコメントし、車両価格を据え置く方針を示す。いったんは追加関税に伴うコスト影響をトヨタ側で食い止め、サプライチェーン(供給網)の混乱を避ける狙いがあるとみられる。
米国は、貿易相手国と同水準まで関税を引き上げる「相互関税」も導入する。日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所によると、25%の輸入関税と相互関税が発動した場合、27年の国内産業別GDP(国内総生産)で自動車はマイナス0.8%になると試算する。
政府・与党も国内自動車産業への影響を懸念し、中小・小規模(零細)企業を中心とした支援策づくりを急ぐ。自動車業界内には、国内生産の維持に向けた政府の需要喚起策に期待する声もあるが、新車への買い替え補助には「需要の先食いに終わる」と弊害を指摘する意見もある。一過性の需要刺激策ではなく、保有に伴う経済的な負担を減らすことで、保有台数の底上げやエコカーへのシフトにつながるような車体課税の抜本見直しが強く求められるところだ。