ホンダは「ポケットモンスタースカーレット」に登場する「コライドン」を再現したモビリティ「ホンダコライドン」を開発している。コライドンはゲーム内で主人公を乗せて移動するポケモン。同社は二輪車の自律制御技術やヒト型ロボット「アシモ」の知見も投入し、ほぼ実寸台で再現した。電動ユニットを組み込んでおり、今夏には走行の様子を披露することを目指している。
同社の二輪部門やパワープロダクツ部門、先進技術部門などから有志の社員約40人が参画して開発した。外観は繊維強化プラスチック(FRP)製で、ポケモンの表情や外観は3次元CAD(コンピューター支援設計)ソフトも活用し、金型から製作するなどして作り込んだ。シミュレーション上では走行可能であることを確認しており、手足や顔の動きの再現にも取り組む。
きっかけは昨年、トヨタ自動車の有志団体、トヨタ技術会がコライドンと対を成すポケモンを再現した「トヨタミライドン」を製作したことだった。触発されたホンダの二輪・パワープロダクツ事業本部二輪事業統括部の坂本順一チーフエンジニアはポケモン(石原恒和社長、東京都港区)に企画を打診し、ホンダの新車開発フロー同様に「評価会」を経てプロジェクトを発足させた。
超低速でも安定して走行するため、過去に開発した「ホンダライディングアシスト」の制御ユニットを移植するなど、こだわりも随所に盛り込んだ。手足を動かしてもバランスを取る制御技術はアシモの知見を生かすという。
事業とは独立したプロジェクトのため、市販化の予定はないものの、小学生が乗ることを想定してステップも取り付けている。坂本チーフエンジニアはホンダコライドンと技術を通して、「ものづくりの面白さが一人でも多くの子どもたちに伝わることがゴールだ」と話す。若手を主体に約8カ月で開発したノウハウも、今後、社内の製品開発に生かしていく考えだ。
ホンダコライドンは3月上旬に同社1階のホンダウエルカムプラザ青山(東京都港区)で展示され、親子連れなどの好評を博した。