トランプ米大統領は、通貨安への誘導を理由に日本からの輸入品に追加関税を課す可能性を4日までに示唆した。加藤勝信財務相は同日の閣議後会見で通貨安への誘導を否定したが、トランプ大統領は通貨安による〝不公正な貿易条件〟を是正するに当たり、関税を使えば「解決は極めて簡単だ」と強調した。「通貨安誘導」「非関税障壁」などを盾に同盟国にも関税をチラつかせるトランプ米政権をどう翻意させるか、日本は難題を抱え込んだ。
トランプ米大統領は「中国の習近平国家主席や日本の首脳らに『通貨安を続けることはできない』と伝えた。米国にとって不公正だからだ」と主張し「関税である必要はないが、関税は簡単かつ手早く効率的で、公正さももたらす」と語った。「自動車工場を建設するのであればここに建てる方がはるかに良い。そうすれば関税はかからない」とも付け加えた。
トランプ米政権は、米国に高い関税を課す相手国に同程度の関税をかける「相互関税」の実施を検討中。問題は、新たな関税率を算定する際、ドルに対する「不当な通貨安」(米政府高官)も考慮することだ。日本は輸入車に対する関税を課していないが、米国の理屈が通れば、相互関税は避けられない。特に自動車・部品産業は多大な影響を受けることが必至だ。
加藤財務相は「通貨安政策はとっていない。先般の為替介入をみてもらえば理解してもらえる」と語る。実際、政府・日銀は昨年、行き過ぎた円安の是正に向けて円買い・ドル売りを複数回、実施している。ただ、米国の貿易赤字で、日本は7番目に金額が多いことも確かだ。政府首脳はいずれも「米国との緊密な連携」を繰り返すが、前途は多難だ。