日本自動車輸入組合(JAIA、ゲルティンガー剛理事長)は、神奈川県大磯町のホテルを拠点に、報道関係者などを対象とした「輸入車試乗会」を4~6日に開催した。インポーター各社から会場に集められた約70車種のうち、約40車種が電気自動車(EV)を含む電動車。国内市場の全体をみると、EVはなかなか普及していないが、24年は外国メーカー車に占めるシェアが初めて2桁を超えるなど輸入車勢が先行している。EVに関心を持つ顧客が一定数いるのは確かで、ユーザーはなぜ輸入EVに引き付けられるのか、話題のモデルに乗ってみた。
世界のEV市場をけん引してきたテスラ。「モデルYロングレンジAWD」に乗って、車線変更をした。ウインカーを操作すると、中央ディスプレーに後方のカメラ映像を映し出し、安全運転を支援する。この機能はソフトウエアのアップデートで追加されたという。これぞ、まさにソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)。次代の車の方向性を予感した。
ボルボ「EX30」も、日本で人気となっているEVの一つ。運転席に座ると、シートはぴったり。ハンドルも細く、手が小さい人でも握りやすい。日本人にちょうど良いサイズと感じた。重量がかさむEVだが、体感は軽く、加速も良い。また、リサイクルしやすい車づくりをしていることも特徴だという。
同じくらいの車体サイズのジープ「アベンジャー」は、2024年9月に発売したばかり。本格的な四輪駆動車としてのイメージが強いジープブランド初のEVだ。乗り込むと、何と言っても収納場所が多いと感じた。センターコンソールの大きなボックスなど、物を置ける広いスペースがあり使いやすい。走りもとても素直で扱いやすい印象だ。ただ、ブレーキの遊びがやや多い感じがあった。
メルセデス・ベンツ「EQS450+」は上級モデルとはこういうものかと、うなった。シートはマッサージ機能付きで、新幹線のグリーン車のよう。安定した足回り、静けさ、加速にも満足した。難点を挙げるとすれば、リアウインドーが小さく、後方がやや見えにくいところぐらいか。
BYD「シールAWD」も完成度の高いEVだと感じた。乗る時に受けた「パワーがあるから気を付けて」という担当者のアドバイスの意味をすぐ実感した。走りの力強さだけではなく、後続車両が迫ると、バックミラーに注意を促す黄色のメッセージが出る機能はいいな、と思った。
ヒョンデの「アイオニック5」の高性能版「N」も迫力のある走りを体感できた。最高出力は478㌔㍗(650馬力)で、ステアリング上部の赤いブーストボタンを押すと一気に加速する。バイパスで試すと、背中を蹴られたかと勘違いするほどに短時間で法定速度に達した。赤いメーター内に、ブーストが切れるまでの10秒をカウントダウン表示するのも粋な演出だった。
さまざまなEVを試乗したが、どれもEVと意識する必要がないくらい走りはスムーズだと感じた。
最後に乗ったのは、フォルクスワーゲン(VW)「パサートeハイブリッドR―ライン」。足元でEVの伸びに一服感が出ている中で、注目が高まっているプラグインハイブリッド車(PHV)だ。モーターならではの力強さと、エンジンがあることでの安心感もある。車内も高品質に仕上がっており、VWの自信作の一つという。
(編集委員・小山田 研慈、編集委員・福井 友則)