東海理化の篭橋榮治収益改革本部長(左)

 トヨタ自動車系中堅部品メーカー5社が1月30日に発表した2025年3月期の通期業績予想は、円安や価格転嫁、生産の上振れなどにより、フタバ産業と愛三工業、中央発條の3社が売上高と利益項目を上方修正した。大豊工業は予想を下方修正し、東海理化は据え置いた。トヨタ自動車が25年の世界生産台数を約1千万台とするなど、高水準な生産は今後も続く見通しだが、中国やタイでの減産リスクや米政権の関税引き上げなどに各社は警戒感を強める。

 フタバ産業は、中国の不振などにより前回決算で通期業績予想を下方修正したが「想定より中国の台数が増えた」(今井英樹取締役)として、前回公表値から営業利益を20億円引き上げた。中央発條も、価格転嫁が進んだことに加え、新型スタビライザーの出荷も業績をけん引し、前回決算に続いて通期の売上高と各利益項目を上方修正した。

 愛三工業は、為替影響や価格転嫁の進展に加え、デンソーから譲り受けた燃料ポンプモジュール事業などで収益性が高まり、通期売上高と各利益項目を上方修正した。前期に達成した過去最高益を更新する見通しだ。

 東海理化は、為替変動や原価改善が利益を押し上げるも、中国やタイの下振れリスクを踏まえ、通期予想を据え置いた。篭橋榮治収益改革本部長は中国について「ハイブリッド車(HV)も対象とする補助金で第3四半期は上がってきたが、今後は弱くなる」と慎重な見方を示した。

 大豊工業は、中国の減産やダイカスト新製品立ち上げ時の生産ロスなどで営業利益と純利益を下方修正した。4~12月期は過去最大の赤字幅となった。延川洋二執行役員は「(中国市場は)商用車関連など、今年に入って改善の兆しがある」とも語った。

 足元では高水準な生産が続くが、中国市場に加え、米国の関税引き上げが懸念材料だ。愛三工業の佐藤健二執行役員は「(メキシコからの関税が)25%もかかれば、大きな影響が出る。全部サプライヤーが負担するのは厳しいので、客先と話は始めている」と語った。中央発條は労働集約型のケーブル事業を北米からタイに移管中だ。矢澤文希取締役は「結果的に関税の影響を緩和できる。(メキシコ工場清算の)関連費用は1年以内に回収できる」とした。

 24年4~12月期の連結業績は2社が増収増益、3社が減収減益(うち1社が最終赤字)となった。ファインシンターは2月12日に決算を発表する予定だ。