二輪車トップメーカーのホンダが、さらなる事業拡大に力を注ぐ。二輪車の世界シェアを現在の4割から5割へと高める目標を掲げた。アジアや中南米を中心に販売台数を積み上げる方針で、特に成長のカギを握るのがインドだ。インド市場では現地メーカーの存在感が高く、ホンダのシェアは2位。電動二輪車を含めラインアップを増やし、トップのヒーロー・モトコープを追い上げる考えだ。さらにグローバルの電動車市場では中国メーカーも脅威で、低価格を武器に攻勢をかける。世界のライバルを相手に、市場ニーズにマッチした競争力の高い商品やサービスの投入により、シェア5割の実現を目指す。
■ターゲットは女性
「いかにインドで台数を、シェアを伸ばしていくか」―。ホンダで二輪・パワープロダクツ事業本部長を務める加藤稔執行役は繰り返しこう述べる。2023年度、同社のインドでの二輪車販売台数は453万台でシェアは25%。トップのヒーローは542万台で、シェア30%を占める。
ホンダは現時点でシェア2位だが、通勤や通学などインド人にとっての「生活の足」となっているスクーターではトップシェアだ。特に同社の「アクティバ」は01年の発売以降、年間約250万台が販売されている人気機種。スクーターでのさらなるシェアアップを狙う。
ターゲットは女性客だ。同社がトップシェアのベトナムではユーザーの4割以上を女性が占める一方、インドでは5%にとどまる。加藤執行役は「インド政府は女性の社会進出に力を入れている。働く女性が増えればスクーター市場が伸び、得意分野でシェアを伸ばしていける」と自信を示す。
加えて、インド市場拡大に欠かせないのが電動化だ。現地ではベンガルールなどの主要都市において、配送事業者などで電動二輪車の活用が広がっており、すでに二輪車市場の5%を電動二輪車が占める。ただ、電動二輪車は新興勢を含む現地メーカーばかり。トップは新興メーカーのオラ(シェア35%)で、次いでインド4大二輪車メーカーのTVS(19%)。以降も現地メーカーが続く。
日本勢は電動化で後れを取っていたが、ホンダは25年に交換式バッテリーを用いる「アクティバイー」と充電式の「QC1(キューシーワン)」を発売する。この2機種でまずはインドの電動二輪車市場でシェア拡大を図る狙いだ。
インドでは電動二輪車の本格普及に向け、コスト低減を実現できる体制も整える。南部のベンガルールに電動二輪車の専用工場を設け、28年の稼働を目指す。生産効率化やモジュールの共通化で、手が届きやすい価格を実現していく考えだ。まずは現地向けを生産するが、将来的には輸出も視野に入れる。コスト競争力の高いサプライヤーの新規開拓も継続する。
■中国勢、欧州で「脅威」
コスト面では欧州地域に進出している中国メーカーも脅威だ。ホンダはドイツやフランス、英国、イタリア、スペインの5カ国でシェアトップを握るが、加藤執行役は「中国勢は本気でレース活動しており、欧州にも輸出を始めている。価格もわれわれより2~3割安く設定している」と危機感を示す。このためホンダは部品の調達や生産効率化などさまざまな取り組みでコスト競争力を高めていく。
加藤執行役は「シェアを上げていくことは簡単なことではなく、当然ライバルがいる。高いシェアを維持している地域でも油断せずに商品やサービスに磨きをかけ、台数を伸ばしていきたい」と語る。世界最大の二輪車市場であるインドを中心にグローバルで台数を積み上げ、世界シェア5割を具現化していく。
(藤原 稔里)