CJPTの大型FCトラックとFCスタック、水素タンク(ともにイメージ)

 燃料電池(FC)で走る大型トラックが実用段階に入る。トヨタ自動車などが出資する商用車技術開発会社、コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT、中嶋裕樹社長、東京都文京区)は今年中に50台の大型FCトラックを運送事業者に納入する。東京を起点に長距離の幹線輸送が始まる見通し。国は2030年までの累計で5千台の導入を構想する。FCバスと並び、大量に水素を消費する大型FCトラックの増加は、関連部品の需要や水素ステーション(ST)の採算向上につながりそうだ。

 大型FCトラックはトヨタと日野自動車が共同で開発を進めている。燃料はトヨタのFCV「ミライ」と同様に70㍋ パスカル の気体水素を用いる。ミライの約6台分となる最大50㌔㌘の水素を搭載し、航続距離は都市間輸送に耐える600㌔㍍が目標だ。このほか、いすゞ自動車もホンダと組んで27年の導入を目指している。

 国は運輸部門の脱炭素化に向け、FC商用車に関してはディーゼルトラックとの差額の4分の3を補助している。東京都の場合、国と重複して受け取れる車両価格の補助や燃料費に対する支援もある。中小企業の場合、導入費で最大9600万円、燃料費で年間2200万円を補助し、点検整備費も助成対象だ。25年にCJPTが投入する50台の大半が、国と都の枠組みを利用して都内の事業者に導入される見通しだ。

 国は当初、乗用FCVの普及を目指していたが、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)との差別化が難しくなってきたことから、普及の軸足を商用車に移した。路線バスや幹線輸送に用いる大型トラックは発着地点がほぼ決まっており、水素STの立地計画が立ちやすい。水素を大量に消費するため、水素STの採算改善にもつながる利点がある。FCスタックや水素タンク、配管など関連部品の需要も広がる。

 現時点で大型FCトラックの価格は約1億6千万円と、一般的な大型トラック(2500万円前後)の約6倍もする。しかし、国は5千台の初期需要を通じ、30年頃にはコストを半減させた量販モデルにつなげていく考え。