大塚ローテック「5号改」
ミネベアミツミの世界最小ベアリング
ミネベアミツミの世界最小ベアリング
時計に見入る貝沼由久会長CEO(右)

自動車をはじめ、さまざまな部品に使われているベアリングが、機能とともにデザインの一端も担う高級機械式時計を、ミネベアミツミと、気鋭の「名工」のコラボで実現した。同社の世界最小のボールベアリングが時計全体の円滑な駆動を支えることで逸品を生み出した。普段は黒子役になることが多いベアリングにも光を当てることで、「技術力の情報発信とともに、エンジニアのモチベーションにもなれば」という。

東京時計精密(浅岡肇代表取締役、東京都文京区)が製造する国産ブランド「大塚ローテック」の新製品に使われた。「大塚ローテック」は、「現代の名工」にも選ばれている片山 次朗氏が手掛けるブランド。片山氏は、時計界のアカデミー賞と呼ばれている「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)2024」のチャレンジ部門でグランプリを受賞している。

今回発表された「5号改」は、衛星のように周回する数字盤と、固定された目盛りが組み合わさって時間を刻む「サテライトアワー機構」が特徴だ。機構の駆動を支え、滑らかな回転などをつかさどるボールベアリングに、ミネベアミツミの開発品2種類が使われた。うち1種類は、外径1.5mm、内径0.5mm、厚さ0.65mmで世界最小となっている。

高性能で小型のベアリングを求めていた片山氏が師匠などのツテをたどって探すなかで、ミネベアミツミと接点ができたという。依頼を受けた同社が共創活動を開始。小ロットのこうした高級品・嗜好品向けは通常、あまり手掛けていない同社だが、今回、その意気込みにもこたえて開発した。ベアリングの製造は、研削から最終工程の組み立てまで、社内でも限られた技術者により、手作業で製造されている。

ベアリングを、あえて際立たせるようにデザインされた逸品。3月1日に発売予定で、74万8000円(消費税込み)。大塚ローテックの片山次朗氏は、ミネベアミツミ側との対話のプロセスにも丁寧さを感じたと振り返る。

ミネベアミツミの貝沼由久会長CEOは発表会で、「こうした超精密加工技術と垂直統合生産システムは、他社にはないミネベアミツミの強みで、オンリーワン」と胸を張った。