スバルとマツダは、国内レース「スーパー耐久シリーズ(S耐)」を舞台に脱炭素領域で協力関係を深化させている。スバルは炭素繊維強化樹脂(CFRP)の再生材を昨年からマツダに提供しており、今年から適用範囲を広げていく。将来の量産車への適用を視野に、環境に配慮した取り組みをサーキットで実証することで、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現につなげる。
両社は14日、スバルスタースクエア(東京都渋谷区)でイベントを開き、S耐での取り組みを説明した。
スバルの「航空宇宙カンパニー」はボーイング「787」型機の中央翼などの部品を生産している。航空機には軽くて強いCFRPが使われるが、再生技術やコストの関係でリサイクルは進んでいないのが実情だ。同カンパニーでは製造工程で出た端材のほか、レースで破損したCFRP部品も紡績糸にして再生する技術を確立し、昨年にはレース車両の翼端板に用いた。
マツダは昨年11月の最終戦から、スバルの再生CFRPを車両のボンネット部に用いている。約1.4㌔㌘の軽量化につながった。今年は適用範囲の拡大を目指す。スバルによると、CFRPの廃材は年間10㌧以上出ており、マツダ以外の供給に向けた協議も進んでいるという。
マツダは、競技車両に二酸化炭素(CO2)回収装置を搭載することも目指している。前田育男シニアフェローは「重量の増加などは空力でカバーしたい」と話し、再生可能燃料と合わせ、より環境負荷を下げる「カーボンネガティブ」の実現を目指す。
S耐では、自動車メーカーの開発車両が参戦する「ST―Qクラス」が4年前にできた。現在はトヨタ自動車、日産自動車、ホンダを含めた5社がさまざまな技術の検証やエンジニアの育成に役立つとして参戦中。社内連携の強化にもつながっているといい、スバルのチーム代表を務める本井雅人氏は「航空宇宙カンパニーならではの(空力)数値解析も生かす」と今シーズンへの意気込みを語った。