「小・少・軽・短・美」を「インパクトオブザスモール」として世界に訴求した
アプライドEVと100台規模の生産を目指す電動台車

 【米ラスベガス=中村俊甫】スズキがスタートアップとの協業に力を入れている。出資先の豪アプライドEVとは、自動運転の電動台車を今年末までに100台ほど生産し、現場での実証に入る。同じく出資先で、自動運転車で渋滞の解消を目指す米グライドウェイズは同国アトランタ空港で実証に取り組む。スズキが開発した「電動モビリティベースユニット」の提供先も増やし、広く活用策を探る。

 スズキは今年、米ラスベガスで開催中のデジタル見本市「CES2025」に初出展した。本業の自動車販売というより、新たなパートナー探しが主な狙いで、すでに進めている提携先との取り組みも会場で紹介した。

 アプライドEVと開発中の電動台車は、スズキ「ジムニー」のラダーフレームに、アプライドEVの統合制御システムなどを組み合わせる。これに他社製の自動運転ソフトウエアなどを搭載することで無人走行が可能になる。26年から顧客との実証に取り組む考え。

 この台車は、前後2つのモーターで駆動し、電気的に制御する操舵系やブレーキ機構を持つ。電源系統を二重にして信頼性を高めつつ、ジムニーの部品を流用することでコストを抑える。公道ではなく、工場など私有地での搬送用途を見込む。

 グライドウェイズは軽自動車ほどの寸法の電気自動車(EV)を専用レーンで隊列走行させることを目指している。米アトランタで26年後半から実証を始める予定で、カリフォルニア州でも計画が進む。スズキは人口増による交通課題の深刻化が懸念される途上国などでの活用も視野に同社と組む。

 電動車いすの技術を生かした電動モビリティベースユニットには、これまでに200件を超える問い合わせが寄せられた。高い走破性を生かして「除雪ドローン」や無人搬送車などに生かす取り組みが進む。

 同社は行動理念「小・少・軽・短・美」を「インパクトオブザスモール」と英訳し、無駄なく価値を生み出すものづくり力をCESで世界に発信した。世界のさまざまな課題に対し、他社と協業しながら解決を目指すことで、自動車会社から生活密着型の「インフラ企業」への進化を目指していく。