日本からロシアに向かう中古車の輸出港が変化している。ロシアには、海上輸送の距離が短くて済む富山県や京都府など日本海側の港から出荷するケースが多い。しかし、2024年度上期(4~9月)は千葉県の木更津地区からの出荷が最も多かった。富山地区と伏木地区(富山県)以外が首位となるのは珍しい。背景には、陸送費用の高騰がある。ある輸出事業者は「4、5年前に比べると陸送費が2~3倍になった」としており、中古車の発生が多い関東から直接輸出する動きが加速している。木更津を選ぶ輸出事業者は増加傾向にあり、当面は太平洋側から向かう車両が増えそうだ。
財務省の貿易統計によると、24年度上期の地区別の輸出台数では、木更津が前年同期比16.4%増の2万5355台だった。同27.3%減の2万5100台だった伏木を上回り、首位となった。統計がさかのぼれる05年度以降では、富山と伏木以外が地区別トップになるのは初。
関東は中古車オークション(AA)の主要な会場がそろう。新車市場としても大きく、下取りや買い取りも発生しやすいほか、中古車の流通量も多い。もともと、輸出に回る車両もボリュームが見込めるエリアだ。ただ、従来ならば、関東にある車両を陸送して日本海側から出荷した方が、全体の費用を抑えられるため、伏木や富山地区からの輸出を選ぶ事業者が多かった。
しかし、ここ数年、人件費や物価が高騰傾向にあったことに加え、物流の「2024年問題」も重なったことで陸上輸送を担うドライバーの人手不足が深刻化。運賃が上昇したことで、日本海側から輸出するメリットが薄れていた。このため、関東からそのまま輸出する事業者が増えたもようだ。
木更津地区からのロシア輸出の勢いは、増している。23年度の中古乗用車のロシア向け輸出台数は、前年比6.6%減の20万4141台だった。このうち、地区別では伏木地区が同30.0%減の5万3676台で最多だった。ただ、木更津は22年度比で約2.6倍の3万7655台となり、同13.5%減の3万5747台だった富山を追い抜いた。ある業界関係者は「木更津では5、6年前ごろからロシアへの定期船が多くなっていった」としており、優位に立っている。
中古車輸出に詳しい自動車流通市場研究所の中尾聡理事長は「陸送費の高騰が当面落ち着かないことを踏まえると、木更津にロシア向け車両が集まる流れは続くのでは」と分析している。24年度上期をみても、伏木からのロシア向け輸出台数は約3割減にとどまっている。このままの状況が続けば、24年度通期でも木更津地区が首位となる可能性が高そうだ。
(舩山 知彦)