損害保険大手4社が法人向け共同保険の保険料を事前調整していた問題で、公正取引委員会は10月31日、損保4社に対して課徴金合計20億7164万円の納付を命じた。コスモ石油など9つの企業・団体の保険を巡って独占禁止法(不当な取引制限)違反にあたる価格調整(カルテル)や談合をしていたと判断し、排除措置命令を出した。
損保大手4社は、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。
課徴金は三井住友海上が8億8514万円、損保ジャパンが6億4798万円、あいおいニッセイ同和損保は5億640万円、東京海上日動は3212万円。各社とも課徴金減免制度に基づいて違反を事前に申請しており、東京海上日動と損保ジャパンは免除と減額があった。三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は減額があった。
9つの企業・団体は、コスモ石油のほか、JERA(奥田久栄社長、東京都中央区)、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC、高原一郎理事長、東京都港区)、シャープ(沖津雅浩社長、堺市堺区)、京成電鉄、警視庁、東京都、仙台国際空港(前田基社長、宮城県名取市)、東急。
JERAやコスモ石油などが契約者の保険では、事前に調整をして保険料を引き上げたり、維持するなどしていた。警視庁が発注した自動車保険でも受注企業をあらかじめ損保ジャパンに決めて談合をしていた。
各社の代表には同日、公取委の大胡勝審査局長が排除措置命令などを申し渡した。大胡審査局長は「会社の体質が問われている」と強調。再発防止に向けた各社の取り組みについては「外形的にコンプライアンス(法令順守)のプログラムを作るだけでなく、取締役から従業員までしっかりと魂を入れて法令順守を徹底してもらいたい」述べた。今後も「何か問題があれば、さらに厳しい対応もあり得る」と語った。
損保4社は同日、今後は再発防止に取り組んでいく、などとのコメントを出した。課徴金は各社とも2025年3月期決算に特別損失として計上する。
23年6月に発覚した損保4社による価格調整は、約580の取引先(企業・団体)であったことが金融庁の調査で判明。4社は同年12月に行政処分を受けている。
公取委は、金融庁と日本損害保険協会(損保協、城田宏明会長=東京海上日動社長)に対しても、損保各社に独占禁止法の遵守を周知するよう要請した。また、損保4社に加えて、保険代理店の共立(石井哲代表、東京都中央区)に対しても排除措置命令を出した。JOGMECの保険で価格調整に関わったため。