電気自動車(EV)の基幹部品「eアクスル」をめぐる生存競争が早くも本格化している。主要市場の中国は日系メーカーが追随をためらうほど競争が激しく、中国以外ではEVの普及が足踏みする。市場拡大を期待して多くの部品メーカーが参入したが、既存の自動車メーカーはeアクスルを内製化したり、系列企業に調達先を絞り込んだりし始めた。今後、eアクスル事業の合従連衡も予想される。
ホンダと日産自動車は業務提携し、主要調達先を巻き込んでeアクスルを共同開発する。まず、駆動モーターとインバーターの共通化に取り組む。これにホンダの関連会社でモーターなどを手がける日立アステモと、日産系でeアクスル事業への参入を目指すジヤトコが協力する。4社が連携し、競争力の高いeアクスルの開発や生産体制の構築を検討する。
三菱電機は、トヨタ自動車系列のアイシンと合弁会社を設立することで合意した。三菱電機モビリティの加賀邦彦社長は「ニーズが多様化している中で、どういう性能が求められるかの直接の情報が入ってこなかった。(アイシンとの提携で)自動車メーカーに近いところで議論できる」と、系列サプライヤーとの連携によるeアクスル関連事業の成長に期待する。そのアイシンは自動車メーカーとの関係強化を進め、トヨタ以外の自動車メーカーが調達するeアクスルや関係部品供給を一手に引き受ける戦略を推進する。今年3月にはスバルと次世代eアクスルを共同開発で合意。7月末にはBMWからもeアクスル生産を受託した。
独立系のニデックは、中国系新興EVメーカーとの取り引きで先行者利益を得て、受注先を世界へと広げるeアクスルの事業戦略を転換した。
中国では完成車メーカーが赤字覚悟で生存競争を繰り広げており、そのしわ寄せが短納期や低コスト要求となって部品メーカーへ向かう。一方で比亜迪(BYD)など大手を中心に複数機能を統合する「Xイン1」化も進んでおり、開発費は増える一方だ。このためニデックは、中国系自動車メーカー向けの不採算事業から手を引き、eアクスル事業はモーター部品を合弁生産するステランティス向けに絞り込む。
今のeアクスルは主にモーターとインバーター、減速機で構成する。どれも既存技術で開発・量産できるため、多くの部品メーカーが関連事業に参入した。しかし、中国市場は採算が合わず、既存自動車メーカーの視線はメガサプライヤーや自社のサプライチェーン(供給網)に向く。新規参入組は当初の目算が外れた格好で、近い将来、eアクスル事業からの撤退や事業譲渡なども予想されそうだ。