ホンダと日産自動車が電気自動車(EV)の基幹部品であるリチウムイオン電池とeアクスルの仕様共通化で合意したことを受けて、関係するサプライヤーが今後の動向を注視している。日産は、ホンダと韓国のLGエナジーソリューションの北米合弁工場で生産するリチウムイオン電池を2028年以降、調達する。モーターとインバーターに関してはホンダ、日産ともに日立アステモ(竹内弘平社長、東京都千代田区)から調達する。サプライチェーン(供給網)の集約が進むことが予想され、系列部品メーカーの業界再編につながる可能性もある。
ホンダと日産は1日、電動化や知能化の分野での協業に合意し、EVの基幹部品であるリチウムイオン電池と、駆動用モーターシステムのeアクスルを共通化する。車載用電池では28年以降、ホンダとLGの合弁工場であるL―Hバッテリーから、日産が北米向けEVに搭載する電池を調達する。日産が日米欧で生産するEV「リーフ」の電池はAESC(松本昌一CEO、横浜市西区)から調達している。栃木工場で生産しているSUVタイプのEV「アリア」は中国系のCATL(寧徳時代新能源科技)から調達しているが、L―Hバッテリーが調達先に加わる予定だ。
一方のホンダはこれまで、地産地消で車載用電池を調達する戦略を推進しており、ハイブリッド車向けを含めて多くの電池メーカーと取引実績を持つ。日本や北米では、GSユアサと共同開発した車載用電池を自社生産する計画で、生産拠点を整備する。
今回、日産がL―Hバッテリーから調達する電池の容量などは明らかになっていないが、ホンダと日産は中長期的にセルとモジュールの仕様を共通化してコストダウンを図る。このため、日産、ホンダとも量産効果を狙って車載用電池の調達先を今後、絞り込む可能性もある。
調達先の選別がより進みそうなのがeアクスルだ。ホンダと日産は、中長期的にeアクスルの仕様を共通化することを視野に、まずモーターとインバーターを共通化する方針だ。調達先の具体例としてホンダの三部敏宏社長が挙げたのがホンダと日立が出資する日立アステモ。ジヤトコが日産向けに25年以降に生産する予定のeアクスルにもアステモのモーターとインバーターの採用が決まっている。
ホンダは中国などで生産するEVのeアクスルを独ヴィテスコ・テクノロジーズから調達しているほか、日産はジヤトコ、日立アステモに加え、軽EV「サクラ」に明電舎の駆動システムを採用している。
ホンダの三部敏宏社長は「eアクスルのコスト的な効果を含めるとアッセンブリーを共通化するのが、一番メリットが大きい」と説明する。eアクスルの「最終的な製造をどうやっていくのかは今後(サプライヤーと)話していく領域」(日産・内田誠社長)としているが、コストを武器にEV市場で優位に立つ中国勢に対抗するには、方向性を早期に決め、実行していく必要がある。
部品メーカーのeアクスルの開発競争は激化しており、ホンダと日産が今後、共通化した部品をどう調達していくのかは今のところ不透明だ。ただ、調達先に選ばれたサプライヤーは、協業によるスケールメリットを享受できる一方、選定から漏れる部品メーカーが出てくることは避けられない。EV時代を控え、系列部品メーカーの明暗を大きく分ける協業になりそうだ。
(村田 浩子)