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 物流の2024年問題や環境問題への対策として期待がかかる「ダブル連結トラック」。社会実装から約5年が経過した。ただ、通行区間や事前申請などの制約から利用する物流事業者数は16社にとどまっているのが現状だ。ダブル連結トラックの普及にはインフラ整備や要件緩和などの推進が必要で、国土交通省も対応を一段と加速している。

 ダブル連結トラックは、国交省が指定した高速道路の区間を通行し、高速道路以外の通行は必要最低限となっている。通行区間は、19年1月29日の新東名高速道路の海老名ジャンクション(JCT)~豊田東JCT間から始まり、以降2回のルート拡充を経て、現在は東北自動車道の北上江釣子インターチェンジ(IC)から九州自動車道の大宰府ICまで約5140㌔㍍にわたる。

 国交省と物流事業者の走行実証結果によると、ダブル連結トラックの省人化・環境負荷低減効果は大きい。同じ重量・距離を輸送する場合、ダブル連結トラックは大型トラックと比較して、必要ドライバー数は半減、燃料消費量・二酸化炭素(CO2)削減量は約4割の削減につながった。このほか、他社のトレーラーを連結する共同運行や、中継拠点を設置して中継輸送することでドライバー不足の解消につながるものと期待される。

 ただ、社会実装以降、利用申請する運送事業者数は今年3月末で16社にとどまる。背景にはダブル連結トラックの運行に関する制限や課題がある。

 物流事業者からの意見や要望を踏まえ、国交省としてもダブル連結トラックの利用促進を図るべく次なる一手を打つ。まずは、9月をめどに通行区間を拡充する。北海道で初めて通行を認めるほか、首都高速と阪神高速、災害時の迂回路となる上信越道、北陸道、中国道などで通行可能区間を拡充。これらの措置で約1200㌔㍍追加して約6330㌔㍍にまで延伸する。これまで、自然災害などによる通行止めを想定した通行区間の拡大は、運送事業者からの懸案事項の一つであった。

 ダブル連結トラック優先駐車マスの整備も進める。今回拡充予定の通行区間において、高速道路各社は全国12カ所のサービスエリア(SA)など休憩施設で新たに整備する。連続運転時間4時間で30分の休憩を求める「改善基準告示」を超過する箇所を解消する。これらを含めて、国交省は今年度に全国29カ所58台分を整備予定で、完成すれば181カ所371台分になる。

 ダブル連結トラックの通行許可申請に関する手続きも見直す。国交省は、運送事業者がオンラインで路線経路と通行許可な経路回答、通行許可を即時に入手できる「特殊車両通行確認制度」に対応したシステム改良を実施する予定だ。22年4月から始まった同制度は全長21㍍以内の特殊車両しか使用できず、ダブル連結トラックは対象外。このため運送事業者は書面による個別審査などを通じて、申請から通行の許可取得まで約1カ月(23年度平均)を要する従来の許可制度で対応している状況だった。

 実際に運送事業者からは、「通行許可取得は困難で工数と費用がかかる。申請してみないと通行条件が分からない」ことがダブル連結トラックの車両導入・運行の妨げになっているとの指摘がある。また、道路管理者によって通行許可条件の判断基準が曖昧なことから、国交省による判断基準明確化も求めている。

 さらに、大型トラックよりも高額となる車両コストや、運転スキルを持ったドライバーの確保などへの対応も課題に挙がる。大型車ディーラーなどでは点検・整備対応できる拠点を構える必要もある。

 深刻化する人手不足など物流の2024年問題への対応は待ったなしの状況だ。ダブル連結トラックの利用拡大に向けた国による施策展開もスピード感が求められている。

(平野 淳)