自然由来の素材も活用する新日本電波吸収体
家庭用ロボット「BOCCO emo(ボッコエモ)」(ユカイ工学)
ナビ情報を活用し、一時停止をドライバーに促す(ユカイ工学)
製品の試験用として活用するFCスクーターも展示されていた(日進製作所)

 24日にリアル展示が閉幕した「人とくるまのテクノロジー展2024横浜」。約590社ものサプライヤーなどが出展した展示会には、話題の電気自動車(EV)向けなどだけでなく、さまざまな視点で考案された個性的な技術も多数展示されていた。その一部を紹介する。

 

【新日本電波吸収体】「シラス」の活用で電波を吸収

 新日本電波吸収体(東京都台東区)は、先進運転支援システム(ADAS)のセンシング用ミリ波レーダー向けに、鹿児島のシラス台地で知られるシラス(火山灰)を活用した電波吸収シートを開発している。乱反射を防ぎ、正確なセンシングにつなげる自然由来の素材として注目され、引き合いがあるという。

レーダーで正しくセンシングするには、レーダー近くの金属物からの反射波の影響などを受けないよう、不要な反射波を吸収するシートなどが求められる。ただ、従来技術では低コストでの量産は難しかった。

 同社は吸収体の電波吸収性能を確保するため、シラスを活用した。シラスはケイ素などで構成し、空気層を持つ「中空状態」も特徴。シートは誘電率の異なるカーボンと空気、シラスという多層構造となり、性能を向上させつつ、低コストでの量産を可能にした。

 同社はこれまでも植物由来の材料を活用した開発を進めてきた経験などがあり、同製品も自動車メーカーをはじめ関心を集めているという。

 

【ユカイ工学】対話型ロボットで安全運転を支援

 家庭用ロボットを開発するユカイ工学(青木俊介CEO、東京都新宿区)は、対話型ロボットで安全運転を支援するロボット開発プラットフォームを展示した。ダッシュボードなどに設置したロボットの映像とマップ情報を用いて、運転中や緊急時の注意喚起、眠気防止など、ドライバーと対話しながら安全運転を支援するという。

 同技術は、ユカイ工学が開発したロボット「BOCCO emo(ボッコエモ)」と、名古屋大学の田中貴紘特任教授の研究を基に共同開発した。ターゲットは、初心者のほかシニアなど運転スキルの低いドライバーで、注意を促すことで加齢に伴う認知機能、視機能、身体機能の低下に伴う交通事故を未然に防ぐのが狙いだ。

 カメラやセンサーだけでなく、あえてロボットを用いた理由として、ロボットを同乗者として見立てることで、一人で運転している時に陥りがちな「自分なら大丈夫」という過信をなくす狙いもあるという。

 走行後は、ロボットの映像を基に運転のフィードバックも行う。担当者は、「ロボットとの柔らかなコミュニケーションを通じてドライバーに自発的な気づきを促し、安全運転につなげたい」と述べた。

 

【日進製作所】評価試験用のFCスクーター

 燃料電池スタックなどを製造する日進製作所(平野卓社長、京都府京丹後市)は、電動小型モビリティなどを手がけるフヂイエンヂニアリング(藤井充社長、三重県鈴鹿市)と燃料電池(FC)スクーターを共同開発した。日進製作所が自社開発品をFCスクーターに搭載して評価試験を行う際に活用する。担当者によると現時点で製品化や販売の予定はないという。

 FCスクーターはフヂイエンヂニアリング製車体に日進製作所が開発した低圧水素ガス容器2機とFCスタック、制御関連機器、モーターコントローラーなどを搭載して開発した。時速20㌔㍍以下の走行が基本だが、時速6㌔㍍以下に制限とすることも可能。今後、人が乗車して自社製品試験を実施する予定だ。