新設した「検査用スキャンツール実演コーナー」
イヤサカ「楽々エーミング」
ニフコ「3D座標を活用したターゲット位置出し作業」
アイシン「出張整備ビークルコンセプト」
安全自動車の非接触式ホイールアライメントテスター「アルゴス」
スマートセーフの非接触式のホイールアライメントテスター「WA913」
オリジンの可搬型EV充放電器「POCHAV2V」と蓄電池「POCHALiB」

 過去最大の規模で3月5~7日までの3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「第21回 国際オートアフターマーケットEXPO(IAAE)2024」には、国内外から418社・団体が補修部品やリサイクルパーツ、整備関連機器などを出展した。3日間合計で1万7097人が来場し、最新の整備関連機器などに対する関心の高さを示した。

 2024年の整備業界は、3月末に特定整備制度の経過措置が終了、10月にはOBD(車載式故障診断装置)検査が始まるなど、大きな転換点を迎える。これを見据えて今回のIAAEには「検査用スキャンツール実演コーナー」が新設されたほか、スキャンツール(外部故障診断機)メーカーの出展が目立った。

 実際のアプリを使用したスキャンツールのデモンストレーションには、整備事業者と見られる多くの来場者が足を運んでいた。ただ、関心の高さとは裏腹に、23年秋に始まったOBD検査のプレ運用は指定整備工場の実施率が伸び悩んでおり、スムーズに新しい制度に移行できるか、課題を残している。

 特定整備制度の経過措置の終了で、4月以降は先進運転支援システム(ADAS)などに使用するセンサーなどの機能を調整する電子制御装置整備を実行する場合、認証が必須となる。業界が慢性的な人手不足の状態にある中で、手間と時間がかかるエーミング(機能調整)作業は整備事業者の悩みの種になっている。カメラを読み込ませる標的や、レーダーを反射させるリフレクターなどのターゲットの位置決め作業などが効率化のネックだ。

 こうした中、イヤサカ(今井祥隆社長、東京都文京区)は、拡張現実(AR)を使う作業支援アプリ「楽々エーミング」に追加した後方車両の接近を検知する「ブラインドスポットモニター」への対応を紹介した。ターゲットの設置に必要な角度も容易に調整できるようにした。

 部品メーカーのニフコは、カメラと3次元マーカーを使ってターゲットの位置決めを支援するソリューションを参考展示した。同社は自動車部品事業の知見で、金属によるミリ波レーダーの反射を防ぐ電磁波吸収パネルを手がけている。自社が保有する技術を活用して、顕在化している整備工場の困りごとの解決につながる製品・サービスの開発を進める。

 同じく部品メーカーでは、アイシンが開発中の「出張整備ビークルコンセプト」を展示した。現場に出張して軽整備することを想定し、トヨタ自動車の「ハイエース」ベースのコンセプトカーに、タイヤチェンジャー、ホイールバランサーを搭載する。動力源としてリチウムイオン電池とモーターを使用、住宅街などへの出張も想定して周辺環境にも配慮する。整備事業者のニーズを確認しながら、実用化を視野に入れる。

 ADASや車両重量が重たい電気自動車(EV)の普及に伴ってアライメント計測の重要性が再認識され、作業の効率化につながる提案が本格化している。安全自動車(中谷宗平社長、東京都港区)は、非接触式ホイールアライメントテスター「アルゴス」を展示した。カメラ搭載の4本の柱に囲まれた測定エリアに車両を止めると、トー・キャンバー角を自動測定する。ステアリングを切るとキャスター角などの自動測定も可能で、治具を使う方式に比べて短時間で作業を完了できる。中国のスマートセーフも、非接触式ホイールアライメントテスター「WA913」を展示した。整備用リフトに持ち運び可能な磁石付きセンサーで固定すれば準備が完了する。国内では代理店のアルティア(浜本雅夫社長、東京都中央区)が今春から夏にかけて販売開始する予定だ。

 また、本格的な普及が見込まれるEVのアフターサービスとして、電源機器などを手がけるオリジンが、電欠で動けなくなったEVの救援に使う可搬型EV充放電器「POCHA(ポチャ)V2V」と蓄電池「ポチャLiB」を展示した。最寄りの充電ステーションまで自走できる15㌔㍍分の電力供給を想定する。EV同士の場合、約15分で給電できる。可搬タイプのため、レッカー車だけではなく、EVの乗用車や軽商用バンなどでの輸送も可能だ。

 IAAE2024では整備や板金、部品・用品、業務支援システムなど多岐にわたるアフターマーケット分野の企業・団体が出展した。海外からは前年の約3倍となる200を超える企業・団体が参加した。セミナーは出展企業のプレゼンテーションを含む合計49本を実施した。

(村上 貴規)