定着率の向上には将来像を示すことも重要

 自動車業界専門の求人サイトを運営するレソリューション(廣谷旭代表、東京都千代田区)が整備士を対象に実施した調査によると、8割以上の整備士が過去に転職を経験していることが分かった。整備士の採用環境が厳しい中で、在籍社員の定着率を高めることが重要となっているものの、厳しい現実が明らかとなった。転職の理由については給与の低さを挙げる整備士が多かった。経済的待遇の改善が、整備士の離職の抑止につながる可能性がある。

 「自動車整備士の転職に関する調査」は、2023年11月21日~12月5日にインターネット上で実施し、1008人が回答した。

 転職経験の有無については、83・2%が「ある」と答えた。転職をしていない整備士は16・8%に過ぎず、整備士の間では転職が当たり前になっていることが判明した。

 今後についても、「今すぐではないが、転職をしたい」とした整備士が40・3%に上った。さらに、「3カ月以内に転職をしたい」が32・3%となっており、待遇が良い職場があればすぐにでも移りたいと考えている整備士が大勢を占めているようだ。

 また、「すでに転職が決まっている」とした整備士も15・3%おり、「転職を考えていない」の12・1%を上回る。一つの職場にとどまろうとする整備士が少ない現実も明らかになった。

 転職の最大の動機となっているのは、「給与が低い」ことだ。直近の転職理由では54・4%、現在の職場への不満も36・6%と、ともに最も高かった。これに「昇給・昇格が見込めない」が、それぞれ32・7%、27・4%で続く。現在の給与水準だけではなく、将来性を感じないことで職場を離れる決断をする整備士が多いようだ。

 少子高齢化の中で、整備の道を選ぶ若者が減っている。一方、車載技術の高度化などで、整備の現場で対応すべき作業も増加。整備事業者は、慢性的な人手不足に悩んでいる。給与をはじめ、職場環境の改善に力を入れる整備事業者も増えているが、多くの整備士の不満を解消するまでには至っていないとみられる。整備士を定着させるためには、足元の待遇改善に加え、キャリアアップをはじめとする将来ビジョンを打ち出していくことも重要になりそうだ。