丁寧に部品を組み付けるセンチュリー。タクトタイムは5時間という
人手をかけてこだわりの塗装を施す

 トヨタ自動車は、田原工場(愛知県田原市)に設けた新型「センチュリー」専用ラインをこのほど報道公開した。同工場では約1500人が働くが、センチュリーの組み立てには高い技能を持つ40人が携わる。細かな手作業で1台ずつ丁寧に組み立てるため、タクトタイム(1台当たり生産時間)は5時間、月間生産台数はわずか30台だ。「匠の技」の粋を集めたセンチュリーでは、日本のものづくり力を世界に問おうと、海外市場への展開も視野に入れる。

 トヨタ初の本格的なショーファーカー(専属の運転手を持つオーナー向け車)として1967年に登場したセンチュリーは、量産車とは全く異なる手法で生産されている。20年末まではトヨタ自動車東日本の東富士工場(静岡県裾野市)にあった「センチュリー工房」で生産していたが、同工場の閉鎖に伴い、匠の技によるものづくりはトヨタの元町工場(愛知県豊田市)へと引き継がれた。

 これまでのセダンに加え、新たに追加されたSUVタイプの生産は田原工場が担う。田原は、高級ブランド「レクサス」と「ランドクルーザー」をはじめとする大型SUVを生産している。特にレクサスの旗艦車「LS」は、国内向け「セルシオ」の時代から手がけており、高い生産品質を誇る。

 センチュリー専用の組み立てライン「田原センチュリークラフツマン工房」(TCCK)は、従業員から選抜された40人の精鋭が作業にあたる。TCCKには、量産車のラインでみられるベルトコンベアや、部品を運ぶ無人搬送車(AGV)がない。車両周囲に整然と並べられた部品をひとつずつ丁寧に組み付けていく。量産車とは1工程の作業量が異なるが、通常1分ほどのタクトタイムがセンチュリーでは5時間かかる。

 量産車では、大半の作業が自動化されている塗装工程についても、センチュリーではより美しい塗装面に仕上げるため、職人による手仕事を残している。バンパーやロッカーモールなどの樹脂部品は射出成型時に金型の合わせ目に「パーティングライン(PL線)」と呼ばれる筋ができる。量産車ではPL線を残したまま塗装するが、センチュリーでは前後バンパーを2時間かけて磨き、平滑にしている。

 バンパーは、塗装時に塗料がゆっくりと重量方向に移動しながら乾くために滑らかな凹凸が発生する。こうした「ゆず肌」をボディ同様に鏡面仕上げとするため、手作業で研磨している。作業効率や仕上がりを良くするため、磨き用パッドを厳選し、作業者の健康に配慮して溶剤レスコンパウンドを使用している。

 センチュリーは、グループ創始者である豊田佐吉氏の生誕100周年を記念して開発した。初代モデルの開発には故・豊田章一郎氏も携わり、その後も日々の通勤車として後席から気づいた改善点を開発陣にフィードバックしてきたという。そして、SUVタイプの新型センチュリーは約3年前に豊田章男会長が発案し「次の100年を見据えたクルマ」として登場した。

 豊田会長は、ものづくりの伝統を継承しながら進化を遂げた「新型センチュリーの素晴らしさを世界に向けて発信したい」と語った。

(福井 友則)