試作した電池の外観
東芝は、コバルトフリーの5㌾級高電位正極材料を用いたリチウムイオン電池を開発したと発表した。2028年にも実用化を目指す。従来から課題だった電解液が酸化分解する際に発生するガスを大幅に抑制することで、高電圧化とパワー性能の向上を図った。産出国が限定的なコバルトは資源の枯渇リスクを抱える。コバルトの使用量を抑えることで安定したサプライチェーン(供給網)の構築につなげる。
リチウムイオン電池の正極に用いるニッケルマンガン酸化物(LNMO)は作動電位が高く、電解液が酸化分解を起こしてガス化しやすいため、電池の膨張や寿命の短命化につながっていた。そこで同社は、正極の粒子表面を改質して電解液との反応を抑制しつつ、負極表面で溶出イオンを無害化する技術を開発。これにより、既存の電解液を使用してもガスが発生しにくい技術を開発した。
すでにニオブチタン酸化物負極を採用した1.5㌂アワー級のラミネート型電池を試作した。3㌾以上で5分間に80%の急速充電を行い、充放電を6千回以上繰り返した場合でも80%以上の容量を維持することが実証できたという。製品化においては「エネルギー密度でLFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)と同等かやや高いくらいを目指す」(同社)考えだ。
まずは電動用具や産業機器用途で28年の実用化を目指す。車載用途も視野に入れており、実用化に向け大容量化と低コスト化を今後進めていく。