国内導入が決まった「グランカングー」
左から順に、仏ルノーのレーヴ氏、プランテジュネ氏、ピシュロ氏

 ルノー・ジャポン(小川隼平社長、横浜市西区)が、今春に全面改良した多目的車(MPV)の新型「カングー」で攻勢をかけている。2022年は先代のモデル末期だったため台数を落としたが、21年は約1600台を販売。同年はルノー車全体で7666台の実績で、およそ5台に1台がカングーとなるなど同社の国内戦略に欠かせない重要モデルだ。日刊自動車新聞の取材に応じたルノーのハインツ・ユルゲン・レーヴLCV(小型商用車)部門上席副社長も「日本の顧客がもっと喜んでもらえる環境を約70の店舗とつくる」とし、メーカー側も日本事業を後押しする姿勢を示した。

 歴代のカングーは広い居住区間と荷室により、さまざまな使い方ができる特徴が日本のユーザーにも受け入れられ、販売を伸ばしてきた。新型でも後部ドアを観音開きとする仕様を用意するなど、「セグメント初の試みを実施してきた」とルノーのLCV部門でセールス&マーケティングダイレクターを務めるティエリー・プランテジュネ氏は胸を張る。

 ただ、輸入車では競合も増えている。シトロエン「ベルランゴ」やプジョー「リフター」のほか、23年にはフィアット「ドブロ」も登場した。そもそも国内市場は、ミニバンが根強い人気がある。これらのモデルは最大7人乗りと、ミニバンの多人数乗りの要素も掛け合わせたMPVとなっている。カングーにはない商品力を持たせ、同モデルが国内市場で築いてきた牙城を崩そうとしている。

 ルノーも応戦する。今後、国内市場に7人乗り仕様の「グランカングー」を導入する方針を固めた。プランテジュネ氏は「3列シートが最大の魅力になる」と明かす。2列目と3列目のシートを取り外せるようにし、多人数乗りの需要に対応しながら、歴代モデルの魅力だった積載性も高いレベルで保つ考え。また、カングーのプロダクトマネージャーであるフローラン・ピシュロ氏は、「ほかのMPVには真似できないほどの車体色の種類を豊富にそろえる」と、競合車種との差別化を図っていく考えだ。

 日本市場はルノーのグローバル事業の中でも、カングー人気が高い。ファンイベントの「カングージャンボリー」は、「世界で唯一のイベントだ」とレーヴ上席副社長も力を込める。同氏は、今年のイベントからも「アクセサリーやオプション開発に活用できそうなアイデアを得られた」としており、今後の商品戦略においても日本の市場や顧客を重視する動きが加速しそうだ。

(舩山 知彦)