トヨタの往年の名車ハチロクこと4代目「カローラレビン」
ソフト99オートサービスなどプロのサポートにより再生を進める
「ソフト99 AE86 1984 再生プロジェクト」と題し、特設サイトを公開
エンジンルーム内まで塗装を行うため、エンジンや補機類を取り外す
再生の様子はソフト99公式ユーチューブチャンネルで視聴できる

 ソフト99コーポレーションは、1980年代の名車として人気の〝ハチロク〟を生産当時の姿に再生するプロジェクトを始動した。同社はこれまで、自社製品を使用したDIYによる旧車の補修をブログで発信してきたが、本格的なレストアは初の試み。自動車向けをはじめ家庭用・産業用ケミカル用品を製造・販売する企業が、レストアプロジェクトを手掛けるのは珍しい。「車を長く乗り続けることで、モノを大切にするという価値観を伝えたい」(広報部・田中邦弘次長)と考える同社の取り組みを追った。

 キーをひねると、走りの意欲を高める独特のエンジン音が車内に鳴り響く。誕生から40年経過したとは思えないほど軽快に走るこの車が、今回再生するトヨタ「カローラレビン」(1984年式)だ。トヨタ自動車の大衆車「カローラ」のスポーツタイプで、レビンとしては4代目モデル。その車両型式「AE86型」にちなみ「ハチロク」の愛称で親しまれている。

 ハチロクはモータースポーツのベース車としても人気が高く、オーナーがチューニングしてサーキットなどでスポーツ走行を楽しむケースがよく見られた。こうしたことから、改造車や事故車が多いとされている。さらに年式の古さも相まって「錆びまみれで穴の空いた車体も少なくない」(同)という。

 しかし、ソフト99が入手したハチロクは、フルノーマル・低走行のワンオーナー車。〝奇跡の1台〟といえるほど、車体の状態が非常に良好だ。田中次長は「乗らない時はカーポートの下でボディーカバーを付けて保管し、メンテナンスもトヨタのディーラーで定期的に行っていたと聞いている。状態からも前オーナーが大切に乗り続けてきたことが分かる」と話す。

 こうした前オーナーの思いを引き継ぎ、同社はオリジナル仕様での再生にこだわる。「シートやホイールといった部品は、純正あるいはそれに近いものをそろえるのは難しい」(同)と苦労が少なくない。ホイールなどは現状の部品を生かしつつ、塗装が剥がれたホイールキャップなどを塗り直し、元の状態へと戻す考えだ。

 通称「パンダ」といわれる白黒ツートーンの車体色も、経年劣化で塗装が薄れはく離した部分がある。今回は外装だけでなく、ドアやトランク、ボンネットを開けた際に見える部分も全て塗り直す全塗装を行う。この際、一時的に取り外すエンジンや補機類には、表面に付着した油や砂を落とし研磨するためブラストやコーティングを行うほか、摩耗した部品の交換も実施していく。

 再生作業は、ソフト99グループで板金塗装(BP)事業を手掛けるソフト99オートサービス(甲斐康之代表、大阪市中央区)をはじめ、プロの力を結集して取り組み、半年から1年かけて完了を目指す。

 取り組みは9月に始まったばかりだが、反響は上々。作業の様子は特設サイトのほか、動画共有サービス「ユーチューブ」、各種SNS(会員制交流サイト)で発信しており、プロジェクト発表直後の特設サイトへのアクセス数が「(他の企画やリリースへの反応と比較して)過去最高の水準」と田中次長は手ごたえを口にする。

 同社は3、4年前から、循環型社会の実現を掲げ、製品のプラスチック使用量削減や鉄道を活用した輸送など、省エネ・省資源化とカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けた取り組みを進めてきた。社会全体で大量生産・大量消費のシステムからの脱却を図る中で、今回のプロジェクトも、サステイナブルな取り組みの一つといえるだろう。

(関西支社・草木 智子)