ビッグモーター(兼重宏行社長、東京都港区)の自動車保険の不正請求問題で、同社が工具で車をわざと傷つけるなどして修理費を上乗せする悪質な行為をしていたことが分かった。「工場長などの指示があった」との証言が多かった。外部の弁護士らによる特別調査委員会の調査報告書に書かれていた。同社が最初に損保各社に提出した報告書は抜粋版で、これらの行為や証言は省かれていた。損保大手が同社に原本を出すよう強く求め、再提出された原本に記載されていた。ビッグモーターの不正請求が組織ぐるみで、調査報告でも隠ぺい工作をしていた疑いが強まった。

報告書の原本には、ゴルフボールを靴下に入れて振り回し車体をたたいてへこませたり、バンパーを力づくで押し込むなどしてフェンダーを傷つけたり、ヘッドライトカバーをわざと壊したりしていた調査内容が盛り込まれていた。同社では顧客の車を故意に壊し、修理費が余計にかかったことにする手口で、保険金を損保各社に水増し請求していた。

また、悪質な行為に至った背景については、板金塗装(BP)部門の経験者が、工場長など幹部の指示があったと、特別調査委の弁護士に証言しているケースも多いという。

こうした事実は、ビッグモーターが最初に損保大手に提出した抜粋版からは省かれていた。隠されていた内容は、(1)板金塗装部門経験者に対しての不正な作業への関与についてのアンケート調査結果(2)不正が行われた経緯(3)個人名が書かれたビッグモーターの経営組織図、など。ビッグモーターは損保各社に対し、「省いてもいいものだと思った」などと釈明したという。

全国に33カ所あるBP部門については、過剰な売り上げのノルマやパワハラまがいの行為が行われていた可能性が高い。報告書の中で、不適切な行為の再発防止策として「板金部門における適正な営業目標の設定」「懲戒処分の運用の適正化等」などと指摘されていることからも読み取れる。

損保各社ではビッグモーターに対し、引き続き調査報告書を対外的に公表することを要求している。

同社は1月、外部の弁護士をトップにした特別調査委を設置。7月5日に自社のウェブサイトで、自動車保険で不適切な行為があったことを調査委に指摘されたと公表していた。

日刊自動車新聞の14日の取材に対してビッグモーターは、「上司が不在で答えられない。問い合わせはメールで入れてほしい」と回答した。