耳たぶなどに装着したゴム電極で脳波を測定する

 オイルシールで認知症予防―。NOKが、ヘルスケア事業への新規参入を検討している。自動車向けのオイルシールやOリングで培ったゴム材料の知見を生かして脳波を正確に測定できる帽子型デバイス「Sottoブレイン」を開発、高齢者施設などで実証を始めた。体験者にeスポーツをプレーしてもらうことで、脳波の動きを読み取り、認知症予防などにつなげたい考え。自動車とは全く異なる新領域となるものの、将来の〝超高齢社会〟に向け、引き合いも期待できそうだ。

 Sottoブレインには、導電材とゴム材料を組み合わせ、電気を通しやすくした「生体ゴム電極」を用いている。この電極をおでこや耳たぶに装着することで、装着者の脳波を測定する。

 通常、脳波を測定する電極には金属が用いられることが多く、装着時に固さや冷たさにストレスを感じる人も多かったという。ゴム電極としたことで装着時の負担感や脳波のノイズを軽減したほか、ジェルなども不要となるため洗髪の必要もなくなる。

 同社はこのデバイスを、ヘルスケアなどの領域で活用したい考えだ。今年から始めた実証では、帽子を装着した状態で高齢者にeスポーツを体験してもらい、脳波測定を行った。スマートフォンアプリと連動することで「注意力」や「学習力」などを数値化する。測定を繰り返すことで、認知症予防に最適なゲームの種類やプレー時間を個別に提案できるという。

 このほかにも、シリコンやウレタンといった材料と導電性のゴムを組み合わせた複合材を用いた筋電測定デバイスも開発中だ。肌や服に装着することで、例えばゴルフのフォームチェックや筋肉を意図的に動かす「EMS」などで活用が見込まれる。

 特にオイルシールなどは、電気自動車(EV)シフトなどで内燃機関車向けの需要減が見込まれる。それに代わる新しい事業の一つとして、ヘルスケア向けで可能性を探っている。すでに市場投入に向けた実証を始めている製品もあり、自動車向けで磨いた技術を生かしていく方針だ。