26日の協議会後の記者会見の様子(右から2番目が内田議長)

 物流業界の「2024年問題」が、開催まで2年を切った大阪・関西万博にも影を落としている。総来場者数2820万人を見込む万博に向けて、運営主体の2025年日本国際博覧会協会(十倉雅和会長)をはじめとする関係各所は会場輸送力の増強を急ぐ。一方、鉄道とともに主要なアクセス手段として期待されるバス領域でも、2024年問題に端を発する運転手不足が懸念されている。人手をめぐって事業者間の〝奪い合い〟の様相を呈する中、対応の模索が続く。

 「バス台数、運転手ともに確保できるか心配している」―。26日、大阪・関西万博の来場者輸送対策を議論する協議会の閉会後の記者会見で、博覧会協会運営事業局の淡中泰雄交通部長は懸念を示した。2024年問題をめぐる報道陣の質問を受けてのものだ。

 万博会場となる夢洲地区(大阪市此花区)へのアクセス手段の一つが、万博運営側が主体となって運行するパークアンドライド(P&R)バス。自家用車を受け入れる「会場外駐車場」と万博会場をピストン輸送するもので、3つ設ける駐車場の1日当たりの最大便数を合わせると700便超に上る。実際の運行便数はピーク時でもこれを下回る見通しだが、相応のドライバー確保は不可欠だ。

 こうした中、課題となるのが運転手の獲得難。来場者輸送に際してはP&Rバスのほか、近畿圏の主要なターミナル駅と万博会場を結ぶシャトルバスや、長距離ツアーバスなど、民間バス事業者が運行するバスも数多く発着する。便数の急増を前にバス業界全体が運転士確保を急いでおり、万博運営側とは人材を奪い合う。これに追い打ちをかけるのが、2024年問題だ。

 問題の発端となった自動車運転者への時間外労働時間の上限規制は、主として長時間・長距離拘束が課題となっていたトラック業界にメスを入れるもの。1人当たりの労働時間を抑えようと運転手増員を急ぐ物流事業者の間では人材獲得競争が激化し、旅客バスを運転できる大型自動車第二種運転免許保有者にも熱視線が注ぐ。

 こうした情勢を踏まえ、博覧会協会は「前倒しで発注している」とするが、「手を挙げてもらえない事態も考えられる。その場合はどうするべきかまた考えていく」(淡中交通部長)と、具体的な対策を講じられずにいる。

 同日の輸送対策協議会では、内田敬議長(大阪公立大学大学院教授)も「ピストン輸送が主体の会場アクセスでは、人員不足がボトルネックとなることはないのではないか」と交通工学の専門家の見地から分析。一方で「(来場者輸送で運転手を抱え込めば)〝玉突き〟で物流業界やツアーバス業界に影響する可能性がある」と指摘し、物流コストやツアー料金の高騰などの形で経済活動にしわ寄せが及びかねないと警鐘を鳴らす。

 博覧会協会は、協議会での議論を踏まえて同日「大阪・関西万博来場者輸送具体方針(アクションプラン)第2版」を公表した。22年10月に示した初版からはさまざまな項目がアップデートされたが、運転手確保に関しては棚上げされたまま。「(今秋に予定する)第3版への反映を目指して準備していく」(同)方針とするが、開幕まで2年を切る中、実効的な方策は急務だ。