JVCケンウッドのカーナビ

 カーナビを始めとする車載マルチメディア事業がスマートフォンの台頭で正念場を迎えている。JVCケンウッドはカーナビなどを製造していた中国・上海の工場を9月末で閉鎖し、生産拠点の国内回帰を進める。三菱電機の車載機器事業も赤字が続き、分社化を検討中だ。各社は経営や生産体制を効率化したり、テレマティクス技術を採り入れるなどしてテコ入れを図る。

 JVCケンウッドは、上海の生産拠点について、9月末で事業活動を終了すると先月末に発表した。この拠点は1994年の設立で、主に日本向けのカーナビやカーオーディオを生産してきた。近年は需要の伸び悩みとともに、現地の人件費や原材料費の上昇、コロナ禍のロックダウン(都市封鎖)などの影響を受けていた。中国製造子会社の22年3月期の営業利益は3億2千万円の赤字。円安や地政学リスクなどを踏まえ、上海拠点を閉鎖する。

 三菱電機も苦戦が続く自動車機器事業について、1年以内の分社化を検討中だ。特にカーナビなど車載機器が厳しい。車載機器の部門売上高は自動車機器全体の約25%に当たる2千億円規模だが、数年にわたり赤字が続き、昨年度から新規受注活動を停止している。分社化を機に撤退する考えだ。

 カーナビ市場は特に縮小傾向にある。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、国内出荷台数は18年度の615万台をピークに減少に転じ、22年度は約439万台だった。特に市販カーナビはスマートフォンの台頭で苦戦する。各社は、通信型ドライブレコーダーとの連動や、音声認識などの活用に取り組むが、状況は好転していない。

 ただ、JVCケンウッドは、自動車メーカー純正品など一定の需要が当面、見込めるとして、国内生産比率を22年度の約25%から25年には90%まで高め「地産地消」で事業を立て直す。デジタル技術を駆使して生産を効率化するとともに、自動車メーカーや市場ニーズを迅速に反映させる。三菱電機も経営体制を刷新し、カーナビからは撤退するものの、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を商機に巻き返しを図るとみられる。