三菱ふそうトラック・バスは、幼児置き去り防止装置の開発を中断した。2022年12月に政府が策定したガイドラインの温度条件の基準を満たすのが難しく、直近での開発のめどが立たないため。開発を再開するかどうかは現時点で未定。幼児置き去り防止装置をめぐっては、ガイドラインに適した製品開発に難航している事業者が少なくない。今後計画の見直しに迫られる事業者が増える可能性も出ている。
三菱ふそうは昨秋から、押しボタンを用いた「降車時確認式」の製品の開発を進めていた。新製品は送迎に使われる新車のバスなどに取り付ける方針だった。しかし、政府のガイドラインが公表された後、一部の部品が温度条件を満たしていないことが分かったという。ガイドラインでは最低限マイナス30度から65度の環境下で作動することを要件の一つとしている。同社では代替品を探したものの、「条件を満たす部品が見つからなかった」という。また、部品が調達できたとしても「性能試験環境が整っていない」(同社)ため、開発の中断を判断した。
計画をストップする動きは、自動車メーカー以外にも広がりつつある。装置の開発に取り組んでいたあるシステム関連会社も開発を断念した。この事業者も温度条件をクリアすることができなかった。
幼児置き去り防止装置は設置してから、年1回、自治体による運用状況の確認が行われる予定。動作に問題があった場合はバスを利用する保育施設などの責任が問われることになるため、メーカーにも故障時の対策が求められる。このため、念入りな開発や品質確認を行う必要があり、各社が慎重な判断に迫られる要因になっていると想定される。
三菱ふそう以外の自動車メーカー数社も装置の開発を検討している。しかし、現時点では国への審査の申請がないことから、丁寧な開発プロセスをとっているとみられる。