欧州や中国、米国を中心とした電気自動車(EV)シフトを背景に、車載電池市場が活気づいている。電動化を急ぐ自動車メーカー各社は、電池の安定調達に向けて電池メーカーとの協業体制を構築。EVシフトを商機と捉える電池メーカーは、自動車メーカーの膨大な需要に応えるためのサプライチェーンの構築や高性能電池の開発に力を注いでいる。

 その一方で、激しさを増すのが正極や負極などの電池材料となる資源の獲得競争だ。リチウムやニッケル、コバルトといった主原料は中国など特定の国に偏在。鉱石を輸出禁止にするなど資源ナショナリズムを先鋭化するケースもあり、囲い込みを強化している。

 そのため電池メーカー各社は、原材料調達の中国依存度を減らすサプライチェーンの構築を急いでいる。同時に、原材料を再利用するためのリサイクル技術の開発にも注力している状況だ。欧州では電池材料に一定量のリサイクル材を使用することが義務付けられるため、法規対応の観点からも今後は電池リサイクルも進む見通しだ。

 また、米国で成立した「インフレ抑制法案(歳出・歳入法)」への対応も含め、電池材料の地産地消を実現するサプライチェーンの構築が不可欠な情勢になっている。

 電池そのものも進化を続けている。パナソニックやLGエナジーソリューションなどが手がける新型リチウムイオン電池「4680」はその一つ。電池メーカー各社の投資も活発化している。パナソニックは傘下のパナソニックエナジーが2023年度から4680を量産する。現在、準備を進めており、生産を担う和歌山工場で建屋のリノベーションと生産設備を製作している。米国カンザス州に新設する工場でも生産する計画だ。

 次世代電池の開発も進む。電解質を固体化した全固体電池はその筆頭で、電池メーカー各社のみならず、トヨタ自動車など自動車メーカーも研究開発を強化。日本政府は2030年頃に本格的な実用化を目指している。形状の自由度が高く、液漏れの心配がないことがメリット。エネルギー密度、出力密度とも大幅な性能向上が見込まれている。