自動車メーカーは挽回生産により供給量を増やすことで納期短縮に努める

 自動車メーカーにとって2023年は勝負の一年となりそうだ。新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品調達難や半導体不足などで生産制約を余儀なくされた22年から一転し、各社が挽回生産を本格化する。一時に比べ部品の調達環境が改善する中、安定的に車両を供給することで長納期化の解消を目指す。依然としてコロナ禍や国際情勢など不透明な要素はあるものの、電動化やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)、円安、資材価格高騰など直面する課題に全力を挙げて対応する構えだ。

 22年の乗用車メーカー8社の世界生産台数は、半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品調達難などの影響を受け、1月は前年同月比9・8%減とマイナスのスタートとなった。2月にプラス転換したが、3~5月は再びマイナスとなった。

 上期は生産調整を余儀なくされるなど厳しい状況が続いたが、6月に4カ月ぶりのプラスに転じると、10月まで5カ月連続で前年を上回った。11月は中国の大幅減で6カ月ぶりに前年割れとなったが、8~10月は3カ月連続の2桁増と回復基調で推移した。同期間は、いずれも2桁減だった前年同月の反動が表れた格好だが、半導体の供給状況は以前に比べ改善傾向がみられる。

 22年1~11月累計は2213万1551台で、21年実績(2355万4886台)との差は142万3335台。6月以降は200万台超えが続いているだけに、2年連続の前年超えは確実な情勢だ。22年は生産活動に大きな影響を与えた半導体だが、一時期の需給ひっ迫の状況から脱しつつある。サプライヤーが自動車向けの供給量を増やしたほか、自動車メーカーが汎用品への代替や複数発注、半導体の使用量を低減する設計変更など対策を講じた成果が表れた。

 ただ、半導体の供給量は改善傾向にあるとはいえ、コロナ禍前の水準には戻っていない。今後、自動車メーカーが挽回生産を本格的に進める上では半導体だけでなく、コロナ禍で調達が困難となった各種部品を含めて安定的に確保できるようサプライチェーン(供給網)の一層の強靭(きょうじん)化が課題となりそうだ。

 22年は新型車の投入や量販車種の全面改良が相次ぎ、ユーザーの購買意欲が高まったことで新車の需要が拡大した。一方、稼働停止や生産調整が続く中で需要と供給のギャップが拡大し、長納期化に拍車がかかっている。この中で新車の受注停止や新型車の初期生産で確実に受注が見込める仕様への絞り込みなど納期短縮に向けた取り組みもみられる。

 ただ、生産体制が不安定な中で、販売現場では新車を契約したユーザーに正確な納期を伝えられない悩みを抱えていた。これを受け、自動車メーカーでは納期CS(顧客満足)の低下を防ぐ新たな試みを始めている。

 トヨタ自動車は受発注システム「J―スリム」を国内に導入する。ディーラーの受注データと生産計画を照合し、2年先まで納期を把握できるようにする。ディーラーはユーザーに正確な納期を伝えられるようになり、メーカーも受注残の情報を生産計画に反映しやすくなる。スズキも23年度をめどに正確な納期情報を実現する受発注システムを運用する予定だ。

 挽回生産による供給量の拡大で納期短縮を図るとともに、納期CSの向上につながる仕組みを導入することでディーラーの顧客対応への負担を軽減する。