豊通リチウム(西郷剛史社長)は、福島県楢葉町に国内初となる水酸化リチウムの製造工場を16日に竣工した。リチウムイオン電池の正極材として使用される水酸化リチウムを供給し、電動車の普及に伴う電池需要の拡大に対応する。年間1万トンの生産能力を持ち、早ければ年内にも供給を始める。

 同社は、豊田通商と豪オルケム社の合弁企業で、2018年に創業した。新工場は、アルゼンチンで採掘する炭酸リチウムを原料に水酸化リチウムを生成する。敷地面積は約1万6千平方メートルで、総工費は約100億円。このうち3割ほどを補助金でまかなった。従業員数の8割を地元から採用した。豊通マテリアルが原料調達や物流を担い、正極材を製造する企業に水酸化リチウムを販売する。

 田形拓郎取締役は「現在の国内需要は年間3万~4万トンで、新工場の生産能力を最大限に活用するとシェアの3割ほどをまかなえる」とし、水酸化リチウムの需要について「将来は全世界で100万トン規模まで拡大するのではないか」と語った。

 炭酸リチウムの需要も拡大しており、同社では採掘場の能力増強に着手した。採掘量を1.4倍に引き上げ、製品の引き合いも考慮しながら海外工場も検討する考えだ。