2連覇のフェルスタッペン選手
3年ぶりの開催で観客席は満員に
多くのF1ファンが詰めかけた鈴鹿サーキット
ホンダ復帰を望むファン

オラクル・レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペン選手が10月9日に開かれたF1(フォーミュラ・ワン)の日本グランプリ決勝戦で2年連続でのドライバーズチャンピオンを決めた。チャンピオンマシンに搭載されているのは、21年末でF1から撤退したホンダ製のパワーユニット。第4期初期の不遇の時代を乗り越え、チームが最盛期を迎える中、「これだけ勝てるのにもったいない」とホンダの復帰を望むF1ファンの声は多い。

3年越しの開催を直接見ようと鈴鹿サーキットには決勝戦当日だけで9万4千人が訪れた。レースは大雨で2時間超にわたって中断されるなど大混乱の展開だったが、再開後はフェルスタッペン選手が最後までトップを独走。一方、最終周まで2位だったシャルル・ルクレール選手(フェラーリ)にレッドブルのセルジオ・ペレス選手がプレッシャーをかけ続け、ルクレール選手がペナルティを犯したことでレッドブル勢がワンツーフィニッシュした。

これにより、フェルスタッペン選手が今回の開催でドライバーズチャンピオンになるための条件である「自身の優勝とポイントランキング2位のルクレール選手が3位以下」をクリア。ペレス選手とのチームプレーでフェルスタッペン選手の2年連続でのチャンピオンが決まった。レース後のインタビューでフェルスタッペン選手は「ホンダと日本のF1ファンの前でタイトルを決められたのは特別なことだ」と語った。

ホンダは2020年10月、カーボンニュートラルに投資を集中させるため21年シーズンでF1への参戦を終了するとを発表。21年シーズンは、ホンダが参画するチームのドライバーとして30年ぶりにチャンピオンを獲得し、大きな話題を集めた。それだけに、ホンダ製のパワーユニットを使用して2連覇を決めたにも関わらず、ユニットメーカーの正式名「レッドブルパワートレインズ」にホンダの名が無いことを惜しむファンは多い。

一方、今回の日本グランプリはホンダがタイトルスポンサーとして協力するとともに、支援先のレッドブルとアルファタウリのマシンに「HONDA」ロゴを掲げた。8月には、レッドブルからの要望に応える形で、ホンダ・レーシングが25年シーズンまでホンダのパワーユニットを使用するレッドブルへの支援を継続することも発表しており、F1との距離を近づけつつある。

現時点で25年より先の活動方針は決まっていないが、再参戦を後押しする環境変化もある。F1では26年から合成燃料が使用されるため、カーボンニュートラルの実現に向けた実験場として活用できる余地がある。四輪車事業の主力市場である米国ではF1人気が高まっており、参戦による宣伝効果も見込みやすくなった。また、量産車開発とはケタ違いの短いスケジュールで技術開発と実走行を繰り返すことによる人材育成の効果を撤退後改めて社内で感じているホンダ社員もいるという。

もちろん、数百億円かかるといわれるコストの費用対効果に加え、「カーボンニュートラルに投資を集中させるため」という撤退理由を覆せるだけの理由や意義を見いだせなければ再参戦の可能性は低い。

それでも、日本GPの決勝戦前、鈴鹿サーキット上空をデモ飛行したホンダジェットを見たホンダ幹部はいう。「いつか再参戦して鈴鹿のF1でホンダのeVTOLを飛ばせると素敵だね」。