三菱ふそうトラック・バスは7日、小型電気トラック(EVトラック)「eキャンター」を全面改良し、世界初公開した。日本では2023年春に発売する。車両総重量(GVW)やキャブ幅、ホイールベース、航続距離などが異なる約100種類を輸出用も含めて展開し、幅広いニーズに対応する。新型車の投入により国内の小型トラック販売における電動車比率を30年には30%以上にする。国内EVトラック市場には日野自動車が参入し、いすゞ自動車も発売を予定している。国産3社の商品が出そろうことで、EVトラックが本格的な普及期に入るか注目される。

 全面改良で三菱ふそうが重視したのが多用途展開だ。新型車はモーターを後軸に統合したeアクスルを採用し、ドライブトレインをコンパクトな構造にすることでシャシーのラインアップを拡充した。国内向けは28型式、海外向けは約80型式を展開する。川崎製作所(川崎市中原区)で生産し、輸出も行う。

 GVWは現行型が7・5㌧クラスのみだったが、国内向けが5~8㌧クラス、海外向けが4~8㌧クラスに広げた。キャブは標準幅と広幅、拡幅の3種類を設定し、ホイールベースは2500~4750㍉㍍まで展開する。

 バッテリーはホイールベースに合わせて1~3個を搭載できるモジュール方式を採用した。定格容量41㌔㍗時のバッテリー1個の場合は航続距離が約80㌔㍍、2個は約140㌔㍍、3個では約200㌔㍍と現行型の約100㌔㍍に比べ延長した。

 さらに、ダンプやごみ収集車、冷蔵車などさまざまな架装にも柔軟に対応できるようにした。電力を必要とする架装物を搭載する場合、これまで架装側にインバーターを設置する必要があったが、新型では車両側に専用のモーターとインバーター「ePTO(動力取り出し装置)」を搭載したことで、ディーゼル車用の架装物をそのまま搭載できるようにした。

 車載バッテリーから専用機器を介して外部給電できるV2X機能を標準装備しており、災害時などに役立つ。

 三菱ふそうの小型トラックでは初めて、被害軽減ブレーキ機能を有する巻き込み防止機能「アクティブ・サイドガード・アシスト1・0」を搭載するなど先進安全装備の拡充を図った。

 充電器の設置やコンサルティングなどEVトラックに関する各種サービスをそろえた「FUSO eモビリティソリューションズ」も用意し、事業者のEVトラック導入を支援する。

 小型EVトラックをめぐっては、日野が「デュトロZ EV」を6月に発売し、いすゞが22年度中に投入を目指すなど、各メーカーがEVトラックの本格普及に向けて商品投入を進めている。

 日野は初年度に500台の販売を計画し、中長期的には1千台を目指す。三菱ふそうはeキャンターを17年に発売し、日本や米国、欧州、オーストラリア、ニュージーランドで約450台の導入実績がある。これまではリース販売のみだったが、新型では一般販売も行う。

 政府は50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けたグリーン成長戦略の中で、小型商用車の電動車比率を30年に20~30%とする方針を掲げている。

 7日に横浜市内で開催した新型車発表会で、三菱ふそうのカール・デッペン社長は「(政府の目標に)新型eキャンターを投入することで大きく貢献できる」と自信を示した。同社は具体的な生産、販売計画台数は明らかにしなかったが、他社に先駆けてEVトラックを投入したことで得た顧客からのフィードバックや知見を生かし、今後の販売拡大に向けて本腰を入れる構えだ。