スバルは、運転支援システム「アイサイト」により運転操作量が約8割減少したとの調査結果を発表した。高速道路の渋滞走行時に正面前方を注視する時間も約4割減少した。同社は2030年に自車が関連する交通死者数をゼロにする目標を掲げている。今後、人工知能(AI)を組み合わせ事故防止機能のさらなる向上を図るとともに、快適性向上効果も訴求し、同システムの普及を促進する。

 アイサイトの累計販売台数が6月に500万台に達成したことに合わせ、運転負荷低減効果を定量化する調査の結果を発表した。運転支援システムの事故防止効果はこれまでも数値化していたが、運転負荷の低減効果の定量化したのは初めてという。

 調査では、外部の調査機関とともに、高度運転支援システム「アイサイトX」による運転負荷の変化を視線移動を計測するアイトラッカーや心拍値の計測器、アンケートなどの結果を基に検証した。対象は旧型アイサイトの搭載車を利用するオーナー10人。

 調査結果によると、高速道路の走行時、システム作動時は正面前方車の注視時間が渋滞時に37.8%、通常走行時に28.7%減少した。遠方や左右など正面前方以外に注意を向けられるようになり、結果的に安全性や快適性が高まったという。また、ペダルやハンドルの操作量は82.7%減少し、運転の負荷が軽減していた。

 精神的な負荷低減効果も定量化した。「NASA―TLX」といわれるNASA(米航空宇宙局)の評価手法で数値化した結果、精神的負担は渋滞時に約62%、通常走行時に約32%低下し、結果的により長い間、安全で快適な運転が可能になっているという。同社は調査結果を踏まえ、安全性とともにアイサイトの快適性の向上効果を訴求し、システムの普及につなげる方針。

 一方、スバルは次世代アイサイトの開発も進めている。運転支援システムの高度化や自動運転の実現には車や白線、信号など周辺環境の情報量を従来以上に取得する必要があるが、消費電力やコストの上昇は抑制する必要がある。このため、複数の処理工程をAIで効率良く処理するための「アシュラネット」というシステムを開発。ステレオカメラで取得した点群データと組み合わせ、アイサイトの認知性能を高める。

 スバルはステレオカメラを中核にしたアイサイトの進化を図り、25年以降に一般道路での事故抑制の強化や自動駐車などを実現する方針。現行アイサイトの普及を図りながらシステムをさらに進化させ、交通事故ゼロの実現を目指す。