メガキャスティングを導入するテスラ

 CTC技術の実用化で先行しそうなのがテスラや中国系EVメーカーだ。特にテスラは、CTC技術の実用化を前提にしたものづくり体制を整えている。米国内工場には「モデルY」のアンダーボディーを一体鋳造できる「メガキャスティング」設備を導入している。メガキャスティングは複雑な構造を1工程で製造できるほか、部品点数の削減や軽量化にも寄与する。テスラはCTC技術の実現を公言しており、将来的にモジュールもパックも持たない電池セルを組み込めるようにした車台を一体鋳造する可能性がある。

 トヨタ自動車も昨年秋の電池戦略説明会で、バッテリーコストを半減する技術の一環として、電池パックレスなどを含めて車両と電池を一体開発する方針を示した。CTC技術の実用化も視野に入れている。

 CTC技術の実用化で懸念されているのが、シャシーと電池を一体化してあることから、交通事故などで衝突した時の修理コストが高額になることだ。その点、テスラや中国の新興EVメーカーは先進運転支援システム(ADAS)や自動運転などの衝突リスクを低減する技術を積極的に導入、ぶつからないクルマにすることで、CTC技術を実用化しやすくする。

 EVの性能を大きく左右するシャシー技術が急速に進化する中、自動車メーカーもEV専用プラットフォームの開発を本格化している。先行しているのがフォルクスワーゲン(VW)グループで、EV専用プラットフォーム「MEB」(モジュラー・エレクトリック・ドライブマトリクス)を開発して、EV「ID.」シリーズをはじめ、グループ各社のEVに活用する。

 ホンダは今年、中国市場に投入したEV2モデルにEV専用プラットフォームを開発して実用化したが、これとは別に26年にEV専用プラットフォーム「e:アーキテクチャー」を開発する計画だ。新開発プラットフォームは、OTA(オーバー・ジ・エア)によって無線通信でソフトウエアをアップデートし、後から機能を追加できる新しいE&Eアーキテクチャーを組み合わせる。

 マツダは「スカイアクティブEV専用プラットフォーム」を独自開発する計画だ。EV専用プラットフォームを使ってバッテリーの搭載量や全長や全幅が異なる複数のモデルを展開、E/Eアーキテクチャーも刷新する。ホンダ、マツダともに車体床下にバッテリーを敷き詰める方式で、CTPやCTCなどへの対応は明確にしていない。

 現在市販されているEVはEV専業のテスラを除いて既存の内燃機関向けプラットフォームをベースにしているモデルが多い。ただ、テスラやBYDなどの新興自動車メーカーは、過去の成功体験やしがらみが少ないだけに、新しい技術を積極的に採り入れてEVを進化させている。将来の標準的なEVがどんな構造となるかは見通せないが、EVの差別化要因となる可能性のあるプラットフォームの進化をリードすることが、EV時代を生き残るためのカギとなる。

(編集委員 野元政宏)