リケンの前川泰則社長兼CEO兼COO(左)と日本ピストンリングの高橋輝夫社長

 ピストンリング大手のリケンと、同じくピストンリングやバルブシート、カムシャフトなどを手がける日本ピストンリングは27日、経営統合することで基本合意したと発表した。電気自動車(EV)シフトが加速する中、事業縮小が避けられないエンジン部品メーカー同士が経営統合し、経営資源を有効活用して生き残りを目指す。2023年4月に持株会社方式で経営統合する予定で、合併後の新社名は「リケンNPR」とする。

 両社はピストンリングをはじめ内燃機関部品が主力で、リケンの主な取引先がホンダで、日本ピストンリングがトヨタ自動車。ライバル会社同士だが、経営統合によって生産拠点の最適化、コスト競争力の強化、非自動車向けエンジン事業の新規創出などを進める。

 中国市場や欧州市場でEVシフトが急速に進む中、エンジン関連部品を主力とする部品メーカーは将来的な事業の縮小が避けられない状況で、EV向け事業や自動車以外の分野の新規事業創出を模索する部品メーカーも少なくない。EVシフトを理由に、内燃機関向け部品を主力とするサプライヤー大手が経営統合するのは初めて。

 両社は経営統合することで、経営リソースを統合・有効活用して自動車用エンジン部品事業の収益力を強化する。製品の相互補完による生産効率化やコスト削減、生産活動やサプライチェーン全体での脱炭素化にも取り組む。生産拠点の最適化も進め、効率的に製品を供給できる体制を構築する。また、船舶、熱エンジニアリング、金属粉末射出成形部品、医療機器などでの新製品創出に取り組むとしている。

 持株会社のCEOはリケン、COOに日本ピストンリングの取締役がそれぞれ就任する。リケンと日本ピストンリングは持株会社の事業子会社として存続するが統合会社発足後、3年後をめどに組織再編を実施する方向で検討する。

 自動車メーカーが内燃機関の研究開発投資を大幅に縮小している中、両社は経営統合することでエンジン関連事業を効率化して競争力を強化するとともに、事業規模も見直し、生き残りを図る。

 リケンの前川泰則社長兼CEO兼COOは「(統合することで)より強い製品を造れる。両社の生産拠点も分散しているので、強みを生かせる。エンジン開発のリソースを新しい分野に振り向けるメリットも出てくる」と経営統合の効果を強調した。日本ピストンリングの高橋輝夫社長は「(EVシフトが進む中でも)同じ製品を開発しているので効率化できる。統合した方が生き残れる方向になる」と述べた。