自動運転や電気自動車(EV)などで自動車産業を取り巻く環境が急速に変化する中、クルマの安全や安心を支える整備士資格も大きく変わろうとしている。国土交通省では「ガソリン」や「ジーゼル」など細かく分類されている資格の種類(二輪車を除く)を、1、2、3級に集約するなどの改正案をまとめた。パブリックコメント(意見公募)の内容を盛り込んで、5月の「自動車整備士技能検定規則等の一部を改正する省令案」の公布を目指している。新制度は2027年1月の施行を見込む。新時代に対応できる人材育成のほか、新たな整備士の確保にもつなげたい考えだ。

同規則は1951年8月に制定されて以降、整備士資格について8回にわたり見直されている。今回の改正案では原動機の種類などで細かく分かれていた資格が抜本的に見直される。例えば、これまで1級大型、1級小型の各資格は、共通の1級整備士として新たな資格に生まれ変わる。

試験の内容や要件も変更する。1級整備士試験に義務付けられていた口述試験を廃止。また、大学などで電気、電子の各学科を卒業した者にも3級整備士の受験に必要な実務経験年数を通常の1年から、6カ月に短縮する。事実上、受験のハードルを引き下げ、人手不足が課題となっている整備士への門戸を広げていく考えだ。

こうした制度改正の背景には、急速な自動車技術の高度化がある。自動運転技術の普及やEVシフトの加速が見込まれる中、既存技術や内燃機関を前提とした従来の分類のままでの資格制度では、新たな技術に対応しにくくなる。日々の業務でも「車載式故障診断装置(OBD)」を点検に使うことが当たり前になりつつあり、2024年10月には車検時の「OBD検査」の開始も控える。今後も従来の手法では判断できない電子制御装置の整備が増えていくのは間違いなく、こうした知見を有する人材を育成しやすくする狙いがある。

EVや燃料電池車(FCV)など脱炭素化に向けた電動車をはじめ、さらなる安全や快適を実現する自動運転など、自動車に関わる技術は日進月歩だ。しかし、どんなに便利な機能や高性能となっても、これらの保守を担うのは整備士であることに変わりはない。国交省では資格制度の見直しだけでなく、業界をあげた働き方改革を後押しし、「3K(きつい・汚い・危険)」から「新3K(給与・休暇・希望)」へと、整備士のイメージアップにも取り組んでいく考えだ。