フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、マティアス・シェーパース社長、愛知県豊橋市)とポルシェジャパン(ミヒャエル・キルシュ社長、東京都港区)は19日、最高出力150㌔㍗の急速充電器を基本とする充電網の拡充に向けた業務提携を締結し、新事業「プレミアムチャージングアライアンス」を開始すると発表した。まずはアウディ、ポルシェの2ブランドで取り扱う急速充電器を相互利用可能とするが、他ブランドにも門戸を開く「オープンエンド」な制度設計とし、将来的に他の輸入車ブランドなどの参入も視野に入れる。国内メーカーの急速充電網では最高出力50㌔㍗程度の機器が主流となる中、電気自動車(EV)のラインアップ拡充や最高で150㌔㍗に及ぶ急速充電器の展開で先行する輸入車勢が独自のエコシステムを構築し、住み分けを図る方針だ。

 7月1日から、ポルシェジャパンが自社開発する管理システムをアウディにも展開し、2ブランドの系列ディーラーなどに設置する急速充電器を相互に利用可能とする。スマートフォンアプリで事前に認証した車両に限定して機器を開放する仕組みで、24時間365日の運用を原則とする。2024年までに最高出力150㌔㍗の機器を全国に約150基確保する計画。充電網の増強により顧客の電欠の不安を払拭するとともに、高出力の急速充電に的を絞ることで、他の充電網との差別化にもつなげたい考えだ。

 提携に至った背景の一つとして2社が挙げるのが、高出力の急速充電器を利用する際の料金体系などが発展途上である点だ。例として、国内充電網の8割以上をカバーするイーモビリティパワー(四ツ柳尚子社長、東京都港区)の料金システムは、同社の前身である日本充電サービスが設立された14年、当時設置が進み始めていた20~50㌔㍗級の電力量を前提に設定されている。高出力機器で先行する輸入車勢にとっては「既存の料金体系では出力90㌔㍗以上で充電する場合にはディーラーもコストを回収しきれない」(シェーパース社長)と、採算性に課題がある中、高出力な機器を主力に据える輸入車勢同士で手を組み、150㌔㍗級の急速充電を前提とした料金体系の確立などを急ぐことで、既存の充電網の対抗馬となる枠組みを構築したい考えだ。

 立ち上がりは同じフォルクスワーゲングループに属する2ブランドで進めるが、将来的には提携を他の輸入車ブランドへ拡大することも視野に入れており、キルシュ社長は「オープンなアライアンスとしている。高出力機器を24時間365日利用可能とする要件にさえ合致すれば、他ブランドの参入も歓迎する」と話す。国内ではメルセデス・ベンツやBMWなども最高出力100㌔㍗超の急速充電に対応するEVをラインアップしている。こうしたブランドの合従連衡が本格化すれば、イーモビリティパワーのシステムを活用する国内勢、独自規格の急速充電器を全国に200基以上配備しているテスラに次いで、充電インフラの「第3極」となりそうだ。