スバルの「レヴォーグ」が、国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)による2020年度「自動車アセスメント」(JNCAP)で、最高評価「ファイブスター大賞」を獲得した。ステレオカメラを中核とする高度運転支援システム「アイサイト」を大幅刷新するとともに、ミリ波レーダーも搭載して衝突回避シーンを拡大した。全方位安全思想に基づき開発した衝突安全ボディーも採用して、予防安全と衝突安全の得点はそれぞれ対象車種中、最高レベルとなった。レヴォーグに採用した安全技術は他車種にも展開する計画で、30年目標として掲げるスバル車に関連する死亡交通事故ゼロに向けて前進する。
自動車アセスは、20年度から衝突安全と予防安全を統合して、日本で最も安全な車としてファイブスター大賞を選出する新しい評価制度に移行した。今回、レヴォーグの満点(190点)に対する得点率は98%で、中でも予防安全は82点で満点だった。予防安全試験は、昼間や夜間の条件下、歩行者や車両を検知して事故を未然に防ぐ衝突被害軽減ブレーキの利き具合などを評価する。
スバルは19年度の予防安全性能評価で「フォレスター」が最高評価の「ASV+++」を獲得したものの、得点はトヨタ自動車や日産自動車より低かった。ネックとなったのが、夜間の評価項目で対歩行者・夜間街灯なし(15点満点)の結果が9・1点と低かったためだ。
今回は時速60㌔㍍までの速度域で、夜間や昼間の対歩行者・車両の緊急自動ブレーキの適切な性能を確認した。予防安全性能の向上を支えたのが進化したアイサイトだ。
08年に「レガシィ」に衝突被害軽減ブレーキとしてアイサイトを初搭載して以降、10年にバージョン2、14年にバージョン3と、機能をアップデートしてきた。14~18年に販売したスバル車に搭載されたバージョン3搭載車数45万6944台の情報などを基に算出した追突事故発生率は0・06%だったという。
新型レヴォーグに標準装備した新世代アイサイトは、ハードウエアとソフトウエアを刷新した。主要部品のステレオカメラの調達先は、日立オートモティブシステムズ(現日立アステモ)から、夜間視認性を向上できるスウェーデンのヴィオニアに変更するとともに、画像処理半導体にプログラムを変更しやすいFPGAを採用するなど、高い性能を実現する製品に変更した。視認性を高めたステレオカメラや、ミリ波レーダーも搭載することで交差点での衝突回避性能向上など、検知対応シーンを広げた。
衝突安全(100点満点)は96・91点と評価対象10車種の中で最も高い点数を獲得した。乗員保護の強化に向け、センターピラーに引っ張り強度1・5㌐ パスカル 級のホットスタンプ材を採用した。衝突安全性能の高いプラットフォームである「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」をベースに、外板パネルを最後に接合する「フルインナーフレーム構造」を国内モデルで初採用し、ボディー剛性の向上を図ったことが寄与した。
30年に死亡交通事故ゼロを目指すスバル。藤貫哲郎常務執行役員CTOはこの目標に向け「飛び道具ではなく今ある技術を使ってコストを抑えて素早く届ける」ことに注力する構え。時代の変化に合わせて社内の組織体制を見直すとともに、サプライヤーとの連携も強化し、安全技術の開発効率化を狙う。