マルチマテリアル化は軽量化だけでなく衝撃安全性確保にも貢献する(JFEスチールの超ハイテン材新構造)

 自動車の低燃費化や電気自動車(EV)の航続距離を伸ばすため、さまざまな素材を組み合わせるマルチマテリアル化によって軽量化を追求する動きが広がっている。金属やアルミニウム、樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など、さまざまな材料を、それぞれが持つ特性に合わせて部位ごとに活用することで、強度や重量、コストなどをバランスさせる。異種材料を接合できる技術が進んだことで、自動車へのマルチマテリアル部品の採用が本格化する見通しだ。

 EVは重量のある大容量バッテリーを搭載するため、車両重量が重くなり、これが航続距離にも影響する。鉄の約10倍の強度を持つCFRPと鉄を組み合わせることでEVの重量を減らせるものの、課題もある。CFRPは材料コストが高い上に、成形時間が長く生産性が低い。量産車にCFRPを活用するには「成形サイクルを短縮するための工法を生み出すことが必要」(素材メーカー)だ。

 こうした中、日産自動車はCFRP部品を量産化する技術を確立した。新技術は金型内の炭素繊維への樹脂の流れを高精度にシミュレーションする技術を用いて成形不良を防ぐ。同技術により従来のCFRP部品と比べて成形時間を約80%短縮できるという。

 素材メーカーも自動車の軽量化ニーズに対応するため、部品のマルチマテリアル技術の開発に取り組んでいる。帝人は、繊維強化樹脂(FRP)と鉄やアルミニウムを組み合わせたEV用のバッテリーボックスを開発した。トレーとカバーにガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を使用して軽量化し、強度が必要なフレームに鉄やアルミを使用する。GFRPはCFRPと比べてひずみに強く、衝撃の吸収性が高い。コストもCFRPに比べて抑えられるメリットがある。

 従来のバッテリーボックストレーの製造では、溶接や接着剤を用いて成形するため、成形に時間を要する。帝人が開発したバッテリーボックスは、プレス機で成形可能で、工程を削減して時間も短縮できる。

 また、JFEスチールは、エネルギー吸収部品への採用を見込んだ超高張力鋼板(超ハイテン材)の新しい構造をイイダ産業(飯田耕介社長、愛知県稲沢市)と共同開発した。アウターパネルに超ハイテン材、インナーパネルに軟鋼板を使用し、二つの鋼板を樹脂で挟み込む。板厚を厚くすることで、衝突時の変形角度を緩やかにでき、母材の破断を防ぐことができる。

 超ハイテン材などの高強度材料は変形しにくい特性があるため、衝撃を十分に吸収できないが、近年、衝撃エネルギー吸収部品に高い強度が要求されるケースもある。EVの場合、エンジンを搭載しないことからフロント部分が短くなるケースがある。限られたスペースで衝突安全性を確保する必要があり、新構造の超ハイテン材でこうしたニーズに対応することを狙う。

 マルチマテリアル部品は、EVの航続距離を伸ばして普及促進に貢献するのに加え、内燃機関車では軽量化による燃費向上で二酸化炭素(CO2)排出量も削減につながるなど、環境対応の面でも重要な役割を持つ。経済産業省が立ち上げた「CASE技術戦略プラットフォーム」では「CO2削減」の取り組みとして、2022年度以降の車両軽量化を見据えた材料開発や異素材の接合技術の方向性についての議論が始まっている。

 政府が掲げる50年カーボンニュートラル社会を実現するためにマルチマテリアル部品の自動車への適用拡大が見込まれる。

 一方で、材料製造時のCO2排出量で見ると素材によっては、現在の自動車の主力材料である鉄よりも多いケースもある。自動車メーカーやサプライヤー、素材メーカーは製造工程のCO2排出量も含めてマルチマテリアル技術を自動車にどう生かしてカーボンニュートラルを実現するのか、総合的に検討することが求められている。

(藤原 稔里)