夢の実現を目指すティーンたち(左から山本さん、上野さん、狩野さん、大森さん、臼田さん、中村さん)
ホンダジェットに搭乗
同企画には浄水器などを手がける「タカギ」も協力。所有するホンダジェットを貸し出した
シェア夢発表会の様子
林主任
齊藤チーフ

 ホンダが10代の若者の「夢を応援しよう」と取り組んできた「ザ・パワー・オブ・ティーン」(PoT)の活動を終えた。ホンダエアクラフトカンパニー・藤野道格社長らをゲストに招いた「シェア夢授業」や参加者の夢を互いに共有する「シェア夢発表会」を通じて、コロナ禍で悩みや不安を抱いていた若者がどのように変わったか。活動の締めくくりとなるホンダジェットに搭乗するまでの〝ティーン〟の変化を追いかけた。

 昨年春、新型コロナウイルスの感染拡大によって入学式などの学校行事は相次いで中止。1度目の緊急事態宣言が終わった後も学生たちは部活動や学校行事などを制限された。「開発や生産現場は罹患者や医療現場のために尽力している。私たちにできることはないのか」(ホンダ・林由佳社会貢献推進室主任)―。そんな思いからPoTは始まった。

 同企画はシェア夢授業とシェア夢発表会、ホンダジェット搭乗体験の3部で構成する。昨年11月に実施したシェア夢授業では、藤野氏のほか、レーシングドライバーの佐藤琢磨氏やラグビー選手の具智元氏らが先生役で登場し、自身の体験を基に夢の素晴らしさをレクチャー。企画に応募した若者の中から選ばれたティーンは、12月のオンライン発表会でそれぞれの夢を互いに共有した。そして3月末、リアルで対面し、「ホンダの夢」の象徴であるホンダジェットに搭乗した。

 多くの応募があった中で選ばれたのは6人。年齢や性別も異なれば「図書館をつくりたい」(中村侑太郎さん)、「アフリカの魅力を伝えたい」(上野駿介さん)、「子どもが社会参加できる世界をつくりたい」(狩野詩歩さん)、「山地酪農を支えたい」(臼田千優さん)、「音楽を通じて人の能力とテクノロジーの可能性を融合したい」(山本栞路さん)と、夢も大きく異なる。

 その中で「犯罪率の低下に『空間演出』で貢献したい」という夢を持つのが大森智加さん(16歳)だ。コロナ禍で「この先、どうなってしまうのだろう」という不安感に加え、学校内での活動で「校内選考で同級生に負けて夢が一つついえていた」時に「運気を変えよう」と参加したのがPoTだった。PoTで夢を発表するに当たり、自身の夢について見つめ直した大森さんは「今も決着はついていないけど一本の筋が見つかった。自分にとってそれは地域の人を守りたいということ」と、なりたい自分を明確にしたという。

 〝ティーン〟はPoTに参加して何を得たのか。上野さんが挙げるのは「つながり」だ。コロナ禍で失ったつながりもあれば、今回のイベントのようにコロナ禍でなければつながらなかった出会いもある。上野さんは「6人のティーンが集まって一人ひとりの夢を知ることができた。そこから学びや刺激を得ることができた」と語る。

 ホンダが取り組んできたPoTはコロナ禍が深刻化した2020年度限定の企画で今年度以降に実施する予定はない。ただ、「自分たちも夢の力の大きさや大切さを感じた」(齊藤紀惠・同室チーフ)。社会貢献活動の一環として今後も「夢」をテーマに次世代を担う若者の支援に取り組む考えだ。

〈記者の目〉

 夢の中身は異なっても、はち切れそうな笑顔は全員共通だった。10代とは思えない考え方や行動力に少し引け目を感じたが、取材後には「普段は寝てばかりですよ(笑)」「ティックトックばかり見ています(笑)」と親近感が湧く一面も。コロナから1年が経過した今も社会には閉塞感が漂う。ティーンだけではなく大人も夢の大切さを思い出すべき時かもしれない。(水鳥 友哉)