自動車1台に使われる樹脂は重量ベースで1割とされる(イメージ)
次世代素材として期待されるセルロースナノファイバー(CNF)

 自動車用シートメーカーや内装メーカーが植物由来の素材に再び注目している。トヨタ紡織は自動車メーカーへの提案に向けて素材戦略を見直す。テイ・エス テック(TSテック)はバイオマス(生物由来)の人工皮革を開発中だ。こうした素材はこれまで主に「環境への優しさ」をPRする役回りだったが、世界的にカーボンニュートラル機運が高まる中、各社は二酸化炭素(CO2)排出量が少ないことが取引拡大に直結する可能性がある見て、開発や自動車メーカーへの提案を急ぐ。

 成長が早く、吸収するCO2量も多いアオイ科の一年草「ケナフ」を約20年前から一部のドアトリム基材に使うトヨタ紡織。沼毅社長は「カーボンニュートラルに活かすなら生産地まで含めて戦略を立て直さないといけない」と話す。

 自動車1台に使われる樹脂は重量ベースで1割程度とされる。ケナフや、でんぷんから作る「ポリ乳酸」などの植物由来材料もトリム基材やフロアマット、アンダーカバーなど、一部で使われているが、耐熱性や成形性に課題があり、コストも割高となる。このため、自動車向け樹脂は安価で安定供給できる石油由来が主流だ。

 しかし、部品の製造から廃棄までの「ライフサイクルアセスメント(LCA)」で自動車のCO2排出量を評価する議論が欧州で始まり、状況は変わりつつある。成長過程でCO2を吸収する植物由来材料はカーボンニュートラルと見なされ、自動車メーカーのニーズと合致するからだ。

 TSテックは素材メーカーとバイオマス人工皮革を開発している。石油由来材料を減らすことで「製品CO2排出量を6割減らせる」(保田真成社長)という。植物繊維(パルプ)を使い、鉄の5分の1の重さで5倍以上の強度を持つ次世代材料「セルロースナノファイバー(CNF)」を混ぜた樹脂も研究中だ。CNFはインストルメントパネルやピラーガーニッシュを手がける日本プラストでもコンポジット(複合)材料として開発を進めている。政府系研究機関も実用化を後押しするが、これも石油由来材料に置換できるまでコストを抑えられるかが課題だ。

 豊田合成の小山享社長は「車が変わっていく中で、内外装も時代に合ったものを作らなければならないということ」と話す。同社もCO2排出量削減に向け、素材から計画を練り直している。「大変だが、ヘタをすると仕事がなくなる。逆に言えば、この環境をチャンスに変えることを今まで以上に考えないといけない」(小山社長)という。植物由来の素材をめぐる開発や量産の競争がこれから激しくなりそうだ。