政府は5日、高速道路上でトラック隊列走行の公道実証を実施したと発表した。一般車と混在する状況で「後続無人」と呼ばれる形態で走り、全長60メートルに及ぶ隊列に割り込まれた場合の安全技術などに一定のめどをつけた。ただ、装置の小型・低コスト化や信頼性確保など課題はなお多く、実用化は2025年度以降だ。

 2月に新東名高速(遠州森町パーキングエリア~浜松サービスエリア間の約15キロメートル)で、「電子連結」と呼ばれる車車間通信技術を使い、大型トラック3台の車間距離を5~10メートルに保ったまま隊列走行させた。後続車2台の運転席には人を乗せず、万が一に備えて「保安要員」を助手席に待機させた。

 隊列走行時の課題の一つは割り込みだ。今回は、停車時に人がいた場合に警告を出して発進できないようにしたほか、走行中の割り込み車にも警告を出し、それでも割り込まれた場合はトラックが速度を落として自動停止する技術を開発した。システムは多重化し、軽微な故障が起きた場合は速度を時速50キロメートルに落として走行を続ける「縮退運転モード」も搭載した。また、先頭車の操作情報が瞬時に後続車に伝わるため、先頭車が急ブレーキをかけても追突を避けられる。

 ただ、装置の低コスト化などに加え、後続無人の場合はトラブルで停止した車両をどう扱うかという課題もある。政府としては、電子連結が切れた後もある程度は自走できるよう「レベル4」技術と組み合わせて後続無人の隊列走行を25年度以降に実現させたい考えだ。

 運転席にドライバーを乗せた状態で走る「後続有人」の隊列走行もすぐに普及するわけではない。政府は21年までの実用化を掲げる。日本自動車工業会は昨夏、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)とレーンキープアシスト(LKA)搭載車の商品化で対応していくと発表したが、電子連結に必要な協調型ACCの搭載が進むのは23年頃とみられる。車間距離を10メートル以下に縮めた隊列走行には協調型ACCが欠かせず、後続有人の隊列走行がすぐに日常的な光景になるわけではなさそうだ。