25年度には全国40カ所以上に無人自動運転サービスが広がる可能性がある

 国土交通省と経済産業省の自動走行ビジネス検討会は「自動走行の実現に向けた取組報告と方針バージョン4・0」をまとめた。2015年に発足した同検討会でのこれまでの検討結果を踏まえ、無人自動運転サービスの実現と普及に向けたロードマップ、自動運転の高度化に向けた実証実験、官民の関係者が連携して取り組む協調分野―などを示した。

 自動走行ビジネス検討会は自動走行分野のビジネス化を産学官のオールジャパン体制で推進するため、国交省と経産省が15年2月に立ち上げた。15、16年度に「自動走行の実現に向けた取組方針」としてまとめ、17年度にバージョン2・0を、18年度には「自動走行の実現に向けた取組報告及び方針バージョン3・0」を公表してきた。

 今回のバージョン4・0では20~25年度までの間の無人自動運転サービス実用化に向けたロードマップを示した。また自動運転の高度化に向けた実証実験の実施状況、重点的な協調分野10領域もまとめ、協調領域では安全性評価について高速道路の32シナリオに基づくクライテリア(判断基準)を検討した結果を示した。

 無人自動運転サービスの実現および普及に向けたロードマップは、自動車メーカー、自動運転システム開発業者からヒアリングを行い、走行環境とサービス形態に分け、無人自動運転サービスの実現時期や技術レベルを整理した。

 走行環境については、工場や空港などの「閉鎖空間」、廃線跡などの「限定空間」、高速道路などの「自動車専用空間」、幹線道路などの「交通環境整備空間」、生活道路などの「混在空間」の5つを基本的類型とし、敷地内移動・輸送サービス、小型モビリティ移動サービス、BRT(バス高速輸送システム)・シャトルバスサービス、トラック幹線輸送サービス、ラストマイルタクシーサービスなどの実現時期と技術課題について検討した。

 ロードマップでは早ければ22年度頃、廃線跡などの限定空間で遠隔監視のみのサービスが実現する見通しであるほか、25年度には全国40カ所以上にサービスが広がる可能性があることを示した。ただし実現には人の役割やシステムの機能、制度、インフラ、受容性、コスト、技術などの課題の検討も不可欠とし、ロードマップを官民関係者の共通の指標として取り組んでいくとした。

 走行環境や走行方法が運転者個人に委ねられるオーナーカーについては、サービスカーと比較し無人自動運転の実現に向けたさまざまな課題があるため、18年度報告と同様、25年以降に、走行環境や走行方法が限られる高速道路で「レベル4」(高度自動運転)が実現すると想定した。

 自動運転の高度化に向けた実証実験については、「ラストマイル自動走行実証」「トラックの隊列走行実証実験」「東京臨海部実証実験」について、ニーズが顕在化している分野での実証を実施することが重要であるとした。

 具体的には、①過疎化による事業性悪化が課題となっている地域交通での無人自動走行による移動サービス②運転者不足が深刻な問題となっている貨物輸送での高速道路での後続車両無人隊列走行による物流サービス③一般道の交通インフラからの信号情報や高速道路の合流情報支援情報などを活用したインフラ協調型の自動運転―を先行事例として実証を推進する。

 ラストマイル自動走行実証では、福井県永平寺町、沖縄県北谷町の19年度実証結果を踏まえ、事業性や運用性をより向上するため、遠隔型自動運転およびレベル3(条件付き自動運転)以上での移動サービス実現に向けた実証実験を行っていく。さらには、事業性向上のため、遠隔型自動走行システムで3台以上の複数台車両の無人回送実証を実施していく。日立市で18年度まで行ってきた小型バス自動運転バスの実証実験では、より乗車人数の多い中型バスでの実証が必要との意見を受け、19年度は中型自動運転バスを開発。20年度は5つのバス事業者・地域で1・5カ月以上の実証評価を実施する。

 トラック隊列走行の実証実験では、後続車無人システムの実証実験を19年度に新東名高速道の浜松いなさジャンクション―長泉沼津インターチェンジ間の片道約140㌔㍍で、全域または一部の走行を繰り返す長期実証実験として実施した。

 20年度は実際に後続車無人とする技術の実現に向けた実証実験を新東名高速道で実施する。後続車有人システムでは、システムの高度化として、より高度な共通仕様通信機を用いたマルチブランドによる隊列走行の技術検証を実施するとともに、CACC(協調型車間距離維持支援システム)または、より高度な車群維持機能(割り込み車、登坂路、車線変更など)を加えた「発展型」の開発につながるコンセプトの先行検討を始める。

 東京臨海部実証実験については、自動運転の社会実装に必要な基盤技術の検証を目的とし、臨海副都心地域、羽田空港地域、羽田空港と臨海副都心などを結ぶ首都高速道路でインフラ協調型の実証実験を開始している。さらに、羽田空港と臨海副都心などを結ぶ高速道路では、渋滞や落下物などの先読み情報による安全な車線変更などを行うため、車線レベルでの道路交通情報を作成するための研究開発を実施していることなどを盛り込んだ。

 検討会では自動走行ビジネスを実用化するため地図、通信インフラ、認識技術、判断技術など10の協調分野を策定している。このうち地図について一般道での整備方針を早期に決定することが望ましいとし、特定地域(東京2020実証地区)での実証を踏まえた整備方針を21年までに決定するとともに、国際化やコスト低減のための自動図化更新技術などの開発を推進することを示した。

 18年度に10番目の協調領域に加えた「安全性評価」については、自動走行ではシステムが認知・予測・判断・操作を行うため実車による評価に限界があるとし、バーチャルによるシミュレーションによって評価する必要があるとした。評価に必要となる安全性評価シナリオと、シナリオ作成に必要なデータ収集とユースケースの研究の必要性を挙げた。

 具体的な取り組みとしては、日本自動車工業会や日本自動車研究所が業界協調でユースケースの収集を行っていることから、これを活用するとともに、認識・判断データベースや交通事故データべ―スを活用し推進している。

 18年度に開始した交通外乱での安全性評価プロジェクト「SAKURAプロジェクト」では、レベル3(条件付き自動運転)以上の安全性評価手法を検討するため、自工会が高速道路を体系的に整理した32シナリオに基づいて本格的なデータ収集を開始した。このうち国際的にも議論になっている時速60㌔㍍以下のALKS(自動車線維持システム)に関するシナリオについて特に重点的にデータの取得・分析・パラメーター範囲の特定などを行った。20年度以降は一般道のシナリオ策定についても検討していく。