JFEスチールは2日、超高張力鋼板(超ハイテン材)を、自動車向けのエネルギー吸収部品に適用できる新構造を開発したと発表した。複数の材料を組み合わせるマルチマテリアル技術を活用したもので、樹脂を超ハイテンと軟鋼板で挟み込むサンドイッチ構造を採用、自動車の軽量化と衝突安全性能の向上に寄与する。電気自動車(EV)への採用を視野に開発を継続し、2025年の実用化を目指す。
超ハイテン材の新構造は、防音材や制振材などを手がけるイイダ産業(飯田耕介社長、愛知県稲沢市)と共同開発した。
新構造の特徴はアウターパネルに超ハイテン材、インナーパネルに軟鋼板を採用し、この2つの鋼板で樹脂を挟み込み、板厚を厚くしている点にある。これによって衝突時の変形角度を緩やかにし、超ハイテン材を使った部品で発生する母材の破断を回避できるという。
新構造によって衝突エネルギーを部品が変形することで吸収する必要があるフロントサイドメンバーやリアサイドメンバーといった部品にも超ハイテン材を適用できるようになるとしている。
また、新構造では、樹脂を採用するため、走行時に発生する振動を低減する効果も得られるという。
同社では、走行時の静粛性や航続距離を伸ばすため、軽量化が求められるEVに新構造が採用されることを見込んでおり、自動車メーカーとの共同開発を目指す。すでにサンプル出荷を始めており、性能評価や製造工程のおけるコストなどを検証し、25年の実用化を目指す。